夏に観たくなる映画ってありますよね。
その映画の名前を聞くだけで視界に青空と入道雲が広がり、「とにかく何かしなくちゃもったいない」と活力的になれる映画。誰しも持っていると思います。
個人的に推したいのが、『菊次郎の夏』、『ウォーターボーイズ』、『サマーウォーズ』、そして今回紹介する『ピカチュウのなつやすみ』です。
『ピカチュウのなつやすみ』は『ミュウツーの逆襲』と同時上映された50分弱の短編映画なのですが、人間のキャラクターが登場せず(厳密には声や後ろ姿は一部現れるが、顔は映らない)、あくまでポケモン視点での世界を描いているものです。
登場するポケモンたちがひたすらに可愛くて、彼らの話す言葉はわからないけど、その分想像力を掻き立てられます。
作品自体が非常にほのぼのしていて、癒されること間違いなしですが、特に記憶に残るのがエンディングソングの『ピカピカまっさいチュウ』。改めて聴くと、歌詞が沁みます。
Pokémon Short01 Song - Pika Pika Massai Chu
子供の頃、誰もが遊びの天才だった
でも!!
夏休みは 地球で 一番のイベントなんだ
太陽が 子供たちに ピカピカの魔法をかけるのさ
子供の頃の夏休みは本当に特別だった。終業式が待ち遠しくて仕方なかったものだ。
僕の家は小学校から随分と離れていて、2キロくらいの距離があった。
子供の歩幅でその道を6年間毎日通学していたのも驚きだが、当時の僕はその何でもない道中で毎日何かしらの面白いものを見つけて遊んでいたことがさらなる驚きだ。
普段通らない道を通って迷子になりかけたり、ひたすら猫の後を追いかけたり、道端に落ちているB B弾を集めて秘密基地に隠したり、頭上高くに生っている夏みかんを棒でつついたり石を投げたりして取ろうとしたり。
毎日新しい自分になって、新しい楽しさを発掘していった。
『子供は遊びの天才』と言ったりするけれど、少なくともあの頃の僕は、そういう意味の天才だったと思う。
そんな遊びの天才も夏休みの魔法にかかると、更なる天才に飛翔する。
朝起きてラジオ体操に行って、帰ってきたらアニメの再放送を見て、昼ご飯食べて、友達とゲームして、夕飯食べて、バラエティ番組を見て笑って、庭で花火でもして、お風呂に入って、出てきた頃には疲れ切ってすぐ寝てしまう。
大したことはしていないのだけど、その過程で面白い何かを必ず見つけてくる。遊ぶのに夢中で夏休みの宿題なんてやっている暇はない。
君がいつか開く心のアルバムに
今年の夏の輝きをセーブしておこう
輝かしいかはわからないけど、自分なりに楽しい夏を過ごして、大切にセーブしていたから、今になっても鮮明に思い出せる。
子供の成長は凄まじいもので、昨日乗れなかった自転車に今日急に乗れるようになるし、できないと思っていた逆上がりや25メートルプールの横断もいつの間にかできるようになる。
これも夏の魔法のおかげかな。
「できた!」瞬間の感動は今でも覚えているし、掛け替えのない大切な財産だ。
大人になると夏休みが取りにくい(取れない)し、取れたとしてもたった数日なのは残念だ。
それに、子供の頃に与えられた夏休みのような密度の濃い夢のような時間を過ごせるような気がしないのも悲しい。
しかし、子供の頃の夏休みは大多数の人が等しく経験しているものであろうし、あまり悲観せずに心のアルバムを紐解いて、思い出に浸ってみたらどうだろう。
あのときの夏は特別だったけれど、子供の頃の記憶を辿る夏もまた特別なのではなかろうか。
夏休みを発明した昔の誰かさん
あなたにポケモンノーベル賞あげたいんだ
野暮な気もするが、夏休みの起源について調べてみた。
どうやら夏休みという概念が登場したのは明治時代。
明治14年制定の小学校教則綱領第7条は「小学校二於テハ日曜日、夏季冬季休業日及大祭日、祝日等ヲ除クノ外授業スヘキモノトス」としている。
これは、近代化を推し進める明治政府が外国人教師を積極的に雇用するとともに欧米の教育制度を取り入れようとした結果、学校年度の始まりが9月で翌年6月に終業するという欧米スタイルが定着しつつあった名残であると考えられているらしい。
そうなると、欧米ではなぜこのようなサイクルを採るのかという問題に波及していくが、それを調べるのはやめておこう。
せっかく楽しい夏休みの話をしているのに、実践的な理由がでてきたら、それこそ野暮というものだ。
どこかの偉い人が「子供たちに長い休みを与えることで学校生活とはまた異なった日常に身を置いて、長期休暇ならではの得難い経験をしてほしい」というような願いを込めて夏休みはできたと信じたい気持ちが強い。
最後になりますが・・・
なんとなく昨日の朝、「ピカピカまっさいチュウの記事を書きたいな」と思っていましたが、仕事終わりの帰り道にこのニュースが目に入った。
21年もの間、オーキド博士の声優さんとして子供たちに夢を与え続けていた石塚運昇さんの訃報。オーキド博士の声と言ったらこの人だ。
落ち着いていて、ユーモラスな声と喋り方。しっくり来すぎていて、他の人が声を当てるのが想像できない。
お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。ご冥福をお祈りします。