うたかたラジオ

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【ネタバレなし】心の中に大切な人を守る銃を。『デス・ウィッシュ』を観てきました。

久々の映画レビュー

久々の映画レビューになります。「絶対に観たい!」という映画はなかったのですが、久々に映画館の雰囲気を味わいたくなって足を運んできましたよ。

観た映画はブルースウィリス主演の『デス・ウイッシュ』。

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期待を上回る良作だったので、核心に至るネタバレは避けて感想を書いていきたいと思いますよ。

 

 

あらすじ

犯罪が多発し、警察の手に負えない無法地帯と化した街、シカゴ。

救急救命の患者を診る外科医ポール・カージー(ブルース・ウィリス)は、毎日犯罪に巻き込まれた患者の生死に立ち会っていた。裕福で幸せな家庭だけが彼の平穏の地だった。

しかし、ポールが留守のうちに家族は何者かに襲われ、妻は死に、娘は昏睡状態になってしまう。

ポールの願いも空しく警察の捜査は一向に進展をみせなかった。怒りの頂点に達したポールは、犯人を抹殺するべく自ら銃を手に取り、危険な街へと繰り出し始める―。

 ネタバレなしと書いたが、物語はこのあらすじ通りに進むので、このあらすじがネタバレというべきかもしれない。

外科医である主人公ポール・カージーは、仕事は順調、妻との仲は良好であるのはもちろん、娘の大学進学も決まり、すべてがうまく回っている。それが身勝手な犯罪者の手で一瞬にして崩れ去る。愛する妻は不幸にも命を落とし、娘も助かる保証がない。

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幸せな家族に帰責性などないのに。自分たちの努力で幸せを掴みとってきただけなのに。

それでも世の中は理不尽なもので、物語の舞台であるアメリカ・シカゴでは毎日善人悪人問わず傷を負って病院に緊急搬送されるのであり、「品行方正に生きていれば絶対的に不可侵」だとか「善行を積んでいれば必ずそれが自分に返ってくる」などということはないのだ。

いつどこで犯罪に巻き込まれて死ぬかはわからない。日常的に医師として人間の生死に直面しているポールも肌で痛く感じていることだろう。

 

作品の大きな柱

命の価値は等価であるか

フラットな心境であれば、「善人悪人問わずに等しく一つの大切な命なんだから秤にかけることなんてできないよ!」と、そう思うことは否定しない。人間みな等しく生まれ、等しく死んでいく。

『格差社会』という言葉があるけれど、人が平等なのは「生まれること」と「死ぬこと」のふたつだけで、それ以外の平等なんて誰も保証してくれない。そのふたつが近いも遠いも当然保証の対象外で、与えられた人間側に選択権は残されていない。

確かに平等なんだ。生きているという事実は。

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ただ、作中のポールのように真っ当に生きてきて、最愛の家族を手に入れ幸せに暮らしているのに、これを自分の私利私欲で破壊した犯人の命が奪い去られた妻の命と等価でいいのだろうか。いや、そんなことはないだろう。

医師として善人悪人問わずに命を救う義務を課せられたポールといえども、目の前で死ぬか生きるかの攻防をしている妻とそれを引き起こした犯人が苦しんでいるのを観たら、迷わず妻を助けるだろう。医師である前に夫であって、父であって、男であって、人間だもの。

命の価値は平等じゃない。

 

警察は事件が起こらなければ、助けてくれない。

警察は事件が起きてから犯人を見つけ出し、適切な処罰に期待して司法の場に送り出すことが職務である。これによって治安は維持される。

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しかし、警察がすべての市民の動向を把握して未然に事件を防ぐことは不可能であるし、突発的・無差別的に顕在化する人間の狂気を事前に抑圧することなどできようはずがない。

結局自分、そして自分の家族や財産を守るのは自分自身なのだ。漫然と構えていると全てを失う。そんなシビアな世界なのだ。まぁこの辺のことは何十年と言われていることなので、わざわざ今更取り上げることもないかもしれないが、当たり前のことを当たり前に叫ぶというのもときとして大事なことではないだろうか。

 

動機は私怨?

「やられたらやり返すのが当然だ、泣き寝入りはよくない」とはいっても憎しみは連鎖するわけで、報復が合法化されてしまったら治安も何もあったものではない。

私怨により復讐の鬼になるというのは以前レビューを書いた『検察側の罪人』によく似ているが、こちらの作品は割とボコボコに叩いているので、テーマが受け付けなかったというわけではないというのはわかってもらえると思う。

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人間の命の価値は等価ではない、咎人は消え去るのみというダークヒーロー路線で進んでほしかった気はする。初期のデスノートのような感じでね。

DEATH NOTE コミック 全12巻完結+13巻セット (ジャンプ・コミックス)

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 総括

作品全体を通して言えるのは、ハードボイルド系復讐劇というジャンルとしての完成度は高かったということである。

前半は割としっかり物語が展開されていたが、後半は勢いに任せてなんとか終わらせました感が拭えない。特に結末については、大いに賛否両論あると思う。賛3割、否7割と予想する。ちなみに僕は賛である。

そして、最後の最後のラストシーン。僕は結末については異議がなかったので、「このまま無事終わってくれれば・・・」と願っていたところがあるが、無事素晴らしいラストシーンで幕引きとなった。何かを示唆していたね。余計な味付けをして失敗することがあるし、蛇足に蛇足を重ねて積み上げたものを無に帰すパターンもあるので、映画は最後まで気が抜けない。