うたかたラジオ

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【ネタバレあり】大嫌いなクリスマスを奪い取れ!映画『グリンチ』の感想をつらつらと。

妖怪ウォッチ、ドラゴンボール、シュガー・ラッシュ・・・。

年末に向けてアニメ映画商戦が始まっています。はてなブログ内でもシュガー・ラッシュコラボ企画を実施する予定だそうですね。

シュガーラッシュ

『シュガー・ラッシュ:オンライン』、略して❝シュガラ❞というらしいですが、モンハン勢の僕としては、「シャガルマガラ」通称❝シャガル❞を思い出しますね。

それはそれとして、本日の記事は映画『グリンチ』を観たので、その感想を書いていこうと思いますよ。

グリンチ

(グリンチ : 作品情報 - 映画.com)

クリスマスをテーマにした物語なので、見るなら今ですね。

今回は『ネタバレあり』で書いていきますので、閲覧予定の方は要注意です。

 

 

あらすじ

家族も友だちもいないグリンチはいつも一人ぼっち。

ずっと寂しい毎日を過ごしていた。

だから、オトナになって・・・ひねくれ者になってしまった!

そんなグリンチが一番嫌いなのは、村中が幸せな気分に包まれるクリスマス。

みんなの笑顔が我慢できないグリンチはとんでもない作戦を思いつく。

「サンタクロースに変装して村中からプレゼントを盗んでやる!」

その頃、フーの村に住む少女シンディ・ルーは、❝ある願い❞を叶えてもらうため秘密の計画を立てていた。

そしてクリスマスイヴ、シンディはサンタの格好をしたグリンチと出会う・・・。(映画『グリンチ』公式サイト)

ストーリー展開は極めて明快で、クリスマスが何よりも嫌いな『グリンチ』(上の画像の緑のふさふさの人)がフーの村で盛大に行われるクリスマスパーティをぶち壊しにするために、村中のイルミネーションやプレゼントを夜中のうちに盗み去ろうとする物語である。

アニメーションで可愛らしく描かれているが、やっていることは完全に犯罪。住居侵入、窃盗、器物損壊・・・。

牢屋

犯行の動機が「クリスマスが大嫌いだから」という理由なのだから大人げないにもほどがある。

劇中で「53年クリスマスに苦しめられてきた」と発言するシーンがあるため、彼の年齢は少なくとも53歳以上であろう。もう、いい年やないか。

街中で見る幸せそうなカップルや家族を見てくだを巻くおじさんのようで、見ていて悲しくなる。

ここまで読んでいただければわかると思うが、今回の感想は辛口である。よかった点もあるので紹介はするが、基本的にはダメ出しと考えていただきたい。

 

グリンチってひねくれ者?

グリンチは「ひねくれ者」と評される人物らしいが、まずその点から考察していきたい。

彼は幼少期、孤児院で過ごしており、家族や恋人たちが幸せそうにクリスマスを祝っている姿を見せつけられて、「自分は独りぼっちなんだ・・・」と毎年劣等感に苛まれ続けた結果ひねくれてしまったということだ。

しかし、劇中で描かれるグリンチは「子供が一生懸命作っていた雪だるまを壊す」「棚の高いところにある瓶詰を取れない人の代わりに取ってあげるふりをして、棚の元の場所に戻す→棚を揺らして落とす(割れる)」、「クリスマスが嫌いだからぶち壊しにする」等々。

ハンマー

そこからのみんなの楽しそうな笑顔を壊してやったぞという「したり顔」。

これを見てどう思うか。ひねくれ者じゃなくて、ただの意地悪で性格の悪いおじさんだ。

ひねくれ者というのは、「本当は皆と仲良くしたいのだけど、素直じゃないからいじわるをしてしまう」だとか「わざと思ったことと反対の言動を取ってしまう」というような少し救いのある人のことをいうのだと考える。

グリンチに関しては、根が悪い奴ではないのだろうし、制作側もそういったニュアンスで描いたと思うのだが、言動から滲み出る性格の悪さの方が目立ってしまって、「本当は仲良くしたいんでしょー?このこのー!」とはならなかったのがかなりの違和感であった。

 

改心早すぎ問題

グリンチが「クリスマスぶち壊し作戦」を計画通りに実行し、彼が盗みを完遂する直前にシンディ・ルーに出会う。

シンディはサンタクロースに扮したグリンチを見て、「いつも私たちのためにお仕事を頑張っているママに楽をさせてあげたい」と自分へのプレゼントなんて最初から考えていない優しくて思いやりに溢れたお願いを投げかける。

彼女の真っ直ぐな気持ちに心を打たれるグリンチであった・・・。

クリスマスツリー

しかし、クリスマス当日、村からはシンディの家を含め村中全てのイルミネーションやプレゼントが消え去っていた。

それでも村人たちは希望を失わず、「クリスマスはプレゼントや御馳走があるから楽しいんじゃない。クリスマスはみんなの心の中にある」と村人たちが祝いの讃美歌を歌っている。

昨日のシンディの言葉、村人の強さを目の当たりにして、彼の頑なだった気持ちは解け、奪い去ったものを全て村に返して謝罪の言葉を述べる。

イイハナシダナー。

でも、改心早すぎない?尺の都合もあるのだろうが、53年間積もり積もった劣等感や怨恨がたった数分の少女との会話と讃美歌で雨散霧消するだろうか。

人の優しさに触れて悪の心が浄化されるというのは王道であるし、それが急だとしてもおかしいことではない。

とはいえ、そもそも村人たちはグリンチを仲間外れにしたり好奇の対象としていたわけでもなく、始終フレンドリーである。一方的に彼がクリスマス及び村人を敵視していただけであり、特に村人のブリクルバウムはグリンチを❝親友❞と表現し、パーティに誘う描写もあったのに、「シンディと話して、初めて人の優しさに触れたんですわぁ・・・」というのはあまりにも無理がある。

結局悪い人は誰もいなかったんだね、という方向にもっていきハッピーエンドを飾るのは歓迎だが、そこに至る過程が全てにおいて唐突過ぎてストーリーの薄っぺらさが浮き彫りになっているのだ。

 

映像美◎

ここまで散々な書き様だが、一つ褒めたいのが映像美である。

舞台がクリスマスシーズンの山奥の村ということで、一面銀世界である。その雪の描写が非常にリアルであり、雪の冷たさや美しさ、雪が持つ重量すらも感じられるであった。

雪だるま

キャラクターたちの表情もコロコロと変わり、見ていて楽しいし、自然と笑顔になれる。グリンチは緑の体毛で覆われているが、その毛の一本一本が躍動しており、まるで実写のようなリアルさが感じられた。

そしてメインとなるクリスマスツリーやイルミネーション、プレゼントや御馳走、パーティの様子、そのどれもが温かみがあってほっこりした気持ちにさせられる。

 

総括

積極的に視聴を勧めるものではないが、華麗なる映像美や「悪い人はいなかったんだ」という王道ストーリーを楽しむという点では一定の評価ができる作品である。

ストーリーの薄っぺらさについては、あまり深く考えずに「そういう作品なんだ」ということで、楽しむならばクリスマス前の今ということになるだろう。