以前も記事にしたことがありますが、僕はGBA用ソフト『マジカルバケーション 』というゲームが大好きです。
GBAというハードはどちらかというとマイナーですが、粒揃いの名作がいくつも生まれた名ハードであると個人的には捉えています。
今回はGBAのゲームの中でも特に印象深く、今までプレイしたゲームの中でも五本の指に入るくらいに好きな『マジカルバケーション 』について書いていきます。
マジカルバケーション とは?
ストーリー
主人公は魔法学校『ウィルオウィスプ』に通う、魔法使い見習いの男の子(女の子)。
ある日、15人の愉快で個性豊かなクラスメート達、担任のマドレーヌ先生と一緒に毎年の恒例行事である臨海学校に出かけることになる。
目的地のヴァレンシア海岸では臨海学校で訪れた生徒達が毎年行方不明になっているという曰く付きの場所である。
それにもかかわらずヴァレンシア海岸での臨海学校を中止しないウィルオウィスプには、何か裏の意図があるのだろうか。
最初は臨海学校を楽しんでいた生徒達だったが、突如“エニグマ”と呼ばれる邪悪な生物が現れ、生徒がひとり、またひとりと連れ去られていく。
さらわれた生徒達はどこにいるのか、そしてその目的は何なのか。
主人公が仲間を取り戻す旅が始まるーー。
ゲームシステム概要
戦闘は王道のターン制バトル
キャラクターの速度に応じて先攻後攻が決まるターン制である。
物理攻撃もできないことはないが、魔法学校の生徒らしく魔法主体の戦闘になる。
後ほど詳しく書くが、魔法はこれを司る精霊を呼び出す(魔法の「コール○○」、「ダブル○○」)ことによって威力を増し、精霊は最大7体呼び出せる。
精霊1体につき魔法のダメージが2倍になるので、7匹揃えば(2×2×2×2×2×2×2)128倍になる。いわゆる「精霊コンボ」。
勝敗を左右する「精霊コンボ」
精霊を召喚した状態でこれに対応した魔法を唱えると上述した「精霊コンボ」が発動する。
しかし、「精霊コンボ」は敵側も使用可能であるため、コンボを仕掛けるためにせこせこと精霊を召喚していたら利用されて全滅したというような事態も起こりうる。
また、精霊は呼び出すこともできるが、消すこともできる(魔法の「クリア〇〇」)。基本的には呼び出されている精霊に強い属性の精霊の魔法を使う必要がある。
例外として闇属性の「クリアスピリット」は闇、光、愛を除く13属性の精霊を消すことができ、愛属性の「天使のハグ」は全ての属性の精霊を消すことができる。
精霊について
精霊の属性は全部で16種類
「火」「風」「毒」「美」「刃」「音」「石」「虫」「木」「獣」「水」「雷」「古」「闇」「光」「愛」という16種類にも及ぶ属性の精霊が登場し、各7体まで仲間にすることができる。
クラスメートの15人は光を除くそれぞれの属性が割り振られており、なんとマドレーヌ先生は光属性である。
「火」や「水」、「闇」「光」などは他のRPGでもよく見かけるが、ここまで多くの属性が登場するゲームも少ないだろう。
お決まりとして属性ごとに相性がある。
例えば「光が闇に強い」はよく分かる。
しかし、「火は風に強くて、風は毒に強くて、毒は美に強くて、美は刃に強い」など独特の取り合わせが特徴である。
「水は雷に強い」のだが、慣れた感覚だと逆に思えてしまう。
このように属性はそれぞれに高いと苦手があるが、実は光と闇と愛は特別なのだ。
- 闇は光と愛以外の全ての属性に強い
- 光には苦手な属性がなく、闇に強い
- 愛は特定の相手に強くもなく弱くもない
まずはこの相性を覚えることから始まる。
精霊を仲間にしよう
精霊は先述のように16種類×7体で合計112体であるが、これをコンプリートするのは非常に難易度が高い。
精霊を仲間にする順番はもちろんのこと、プレイ時の禁忌事項に触れないこと、取り返しのつかない要素について取りこぼしをしないことなどが求められてくる。
例えば、
- 美の妖精❝パウダー❞は汚いものを嫌うため、ミミズグミというアイテムを持っていると、「持っているミミズグミを全て捨てるか、パウダー1体と永久に別れるか」の選択を迫られ、後者を選ぶと二度と仲間になることはない。
- 逆に石の精霊❝フリント❞はミミズグミの捕獲数が一定数に満たないと仲間にならない。
- 愛の精霊❝ウィッシュ❞は殺生を嫌うため、フィールド上のカエルグミというアイテムを捕獲したり、店で買ったりすると仲間にならない。
- 逆に闇の精霊❝ニルヴァ❞は一定数以上カエルグミを捕獲していないと仲間にならない。
- 光の精霊❝ルクス❞は、闇の精霊❝ニルヴァ❞が一定数以上仲間になっていると、力添えしてくれない。
大雑把に言えば、「××してはいけない」系の精霊を先にコンプリートした後に全く逆の方向に振り切って「△△しなければならない」系の精霊の収集にあたるといった感じだろうか。
このようなことを気にしながら進めなければならず、事前知識なしのコンプリートは事実上不可能である。
コンプリートは2周目以降のやり込み要素としてとっておいて、純粋に楽しむことをおすすめする。
クラスメートたちを始めとした魅力的な登場人物、重厚なストーリー・世界観
魅力的なキャラクター
『マジカルバケーション』では、1人のクラスメートを除く14人を仲間に加えることができ(その1人は期間限定で戦闘に加わるのみ)、この中から最大6人のパーティを編成する。括弧内は属性である。
キルシュ(火)、ブルーベリー(水)、ショコラ(石)、キャンディ(風)、ペシュ(愛)、レモン(雷)、カベルネ(毒)、シードル(美)、カシス(刃)、アランシア(音)、オリーブ(獣)、カフェオレ(古)、セサミ(虫)、ピスタチオ(木)、そして例の1人であるガナッシュ(闇)。
主人公は最初に闇・光・愛を除く13属性から1つ属性を選択することができるため、上記のクラスメートとお手軽精霊コンボを決めることができる。
御覧の通りクラスメートの名前は食べ物に関連したものであるが、『マジカルバケーション』に登場する人物や土地の名前は大体食べ物である。
「キヤコタ」→たこやき
「モギナス」→すなぎも
といった具合。
クラスメート以外にも「こんにゃく様」というぷるぷるした人(?)やただの「ツボ」、回復アイテムであるはずのカエルグミが仲間になったりする。
全員を仲間にするのは精霊の場合と同じく極めて大変だが、より取り見取りで賑やかなパーティを構成するのは楽しい。
世界観に没入する
美麗なグラフィックとダークファンタジー
キャラクターの魅力を引き立てるのが、『マジカルバケーション』を取り巻く世界観とキャラクターの思想・言動である。
冒頭でも書いた通り『マジカルバケーション』はGBAで出たソフトであり、ハードのスペックから考えれば当時の据え置き機であるPlayStationやNintendo64にはグラフィックやBGM、容量等の面ではるか遠く及ばないはずである。
しかしながら、GBA初期とは思えないほどの美麗なグラフィック、柔らかな色遣い、惹き込まれるようなBGMなど奇跡的な要素が満載で驚かされる。
世界のどこを切り取っても画になるというか、プレイした時の没入感が凄まじい。
と、煌びやかな外観とは裏腹に展開されるのは鬱ストーリーが多い。救いがない重々しいイベントが続くことも度々ある。
もっとも、「ただ暗い」というわけではなく、深く考えさせられるような記憶に刻まれるお話が多いのが個人的に名作と推す理由でもある。
クラスメートの一部を紹介
魅力的なクラスメートたちを紹介したいが、流石に15人は余りにも多すぎるので、厳選して2人紹介することにする。
【ピスタチオ】
「ヴォ―クス」と呼ばれる種族の12歳の男の子。口癖は「~っぴ」。
断じて「ギエピー」こと穴久保ピッピではないことを申し添えておく。
クラスメイトの中で一番魔法が下手で臆病。落ちこぼれとバカにされることもあるけれど、彼のキュートで調子のいい性格で皆から愛されている。
レベルアップによる成長も微々たるもので、レベルが低いうちはパーティのお荷物でしかないけれど、ある時を境に爆発的にパラメーターが伸び始め、全クラスメートの中で1、2を争うほどの強キャラに変貌するロマンあふれる子。
エンディングで最終パーティのメンバーの未来の姿が流されるが、彼はなんと学者になっているのだ。
あんなに出来の悪い子だったのに、頑張ればこんなに立派な学者になれるんだと子供ながらに感動したのを覚えている。
ピスタチオは今でも大好きなキャラクターで、現在当ブログで連載中の『聖剣伝説LEGEND OF MANA』の主人公の名前「ピスタ」はここから取っている。
【カベルネ】
「パペット族」の13歳の男の子。口癖は「~ヌー」。
悪戯好きで目立ちたがり。調子に乗ってクラスメートのブルーベリーをいじめていたら、彼女の親友であるレモンにボコボコにされ、以来おとなしくしている。
この子も大好きで、モンハンのプレイヤーネームは決まって「カベルネ」としている。
頭に被っている麦わら帽子(?)の中には「カエル師匠」と呼ばれるカエルが住み着いている。
5年前、カベルネの父親から「このカエルと一緒にいると凄い魔法使いになれるぞ!」と言われて、それから律儀に共同生活を送っている。
エンディングでは後日カエル師匠の国を訪れたカベルネが様々な珍しい魔法を習得して、カエルの国の守護者になったという話が綴られる。
考えさせられるセリフが散りばめられた世界
本当はいろいろ下調べをしてからマジカルバケーションに登場するキャラクターたちのつぶやきを紹介したいところだが、今覚えているセリフだけ書き出しておく。
お代はラブで結構ですの。(愛の大使の宿屋にて)
ぶっしつもまぼろし。じかんもまぼろし。せかいはまぼろしでできてるプ。それがしんじられないのは、みんなまぼろしだからプ。(パイライト)
死ぬということは、夢から醒めることに似ている。小説を読み終わることにも似ているし、絵を描き終えることに似ている。今までの役割を終えて、本当の自分に戻るように、無限の自由を感じる。(星)
テキトーでいいんだよ。フテキトーよりいいだろ?(ピップルス)
愛でふにゃふにゃになりたい。(愛のかりゅうど)
ツボの中にもたくさんの生き物が住んでいます。ツボの中にも世界があるんです。逆に言うと、世界はツボの中にあるんです。私たちは、ツボの中に住む、小さな虫なんです。(ポット族)
ここで苦言をひとつ
キャラクター良し、世界観良し、BGM良し、戦闘良し。RPGとしてはこれ以上にないという出来であるが、ひとつだけ文句を言わせてほしい。
通信要素。これは唯一の欠点だと思う。
❝アミーゴ❞システム
『マジカルバケーション』における目玉ともいえる❝アミーゴ❞。
通信ケーブルを使って他のプレイヤーと通信を行うことによって新たな魔法を習得するというものだ。
アミーゴシステムをまとめてみると、
- 自分が最初に選んだ属性と異なる属性のプレイヤーと通信をすると、相手の属性の魔法レベル1を習得する。
- 自分が最初に選んだ属性と同じ属性のプレイヤー5人と通信すると、愛の魔法レベル1を習得する。
- 通信の回数が100回に到達すると、闇の魔法レベル1を習得、主人公の属性が闇へと変化する。
ちなみに闇・愛を含む全ての属性をマスターすると究極の属性である光属性を習得する。
そして、『マジカルバケーション』にはラスボスを倒すまでがチュートリアルであったかのような過酷な裏ダンジョンが存在する。
また、闇属性・光属性の主人公限定のダンジョンもあるため、完全にやり込むならばアミーゴシステムを利用することが不可欠なのだ。
精霊をコンプリートするのも結局全魔法を習得する必要があるため、何としてでも実現したいところだ。
ここでひとつ問題がある。
こんなマイナーゲーム、周りに100人もやってる友達おらんわ!
ということだ。
マジカルバケーションが発売してからしばらくはプレイヤーが集まるイベント等が開かれ、活発にアミーゴが行われていたと聞いたことがある。
そういったものに参加しない限り自力で100人のマジカルバケーションプレイヤーを見つけるのは困難である。
そうなってしまうと、泣く泣くGBAとマジカルバケーションのソフトを2つずつ用意して、通信しては片方のデータを消して、また通信してはデータを消して・・・という地道な作業をするほかないだろう。
いわゆる「闇アミーゴ」の横行である。
1サイクル7分かかると想定すると、7分×100回=700分。休憩なしで一日の半分をGBAに注がなければならない。
対戦システム
これまた本来は熱いはずの通信対戦。
『マジカルバケーション』では通信対戦の戦績に応じて❝称号❞が付与され、ステータスに補正がかかる。
称号は「勝率」と「対戦回数」を加味して算出されるのだが、最も高レベルの称号「伝説の魔人」は勝率100%、対戦回数500回以上が要件となっている。
逆に言えば、対戦回数が1万回だろうと10万回だろうと、1度でも負けてしまえば勝率は100%ではなくなるため、「万が一負けてしまうこと」が非常に重い意味を持つのだ。
これは八百長が生じても仕方がない。いわゆる「闇対戦」の横行である。通信の世界は闇だらけだ。
まとめ
最後に『マジカルバケーション 』唯一の欠点と言っていい通信関係の雑さを指摘したが、自分ゲーム史に刻まれ続ける名作であることに変わりはない。
今や当たり前になっているすれ違い通信とならば親和性抜群だったろうに。生まれてくる時代が少しだけ早かったのかな。
ちなみにWiiUでVC版が配信されているそうで、他プレイヤーと通信できない救済措置として、他属性の魔法を通信なしに習得できるそうだ。
GBAで遊ぶのはハードルが高いので、WiiUを持っている方には是非プレイしてほしいものだ。
そして、可能であれば攻略本を手元に置いてどっぷり世界に浸ってほしい。