僕は昔から可愛いもの好きで、ブログ内でもその片鱗を隠すことなく表現しているつもりです。
そんな僕が最近特に注目しているのが「自分ツッコミくま」というキャラクター。
上で引用した記事の「うさまる」同様、メッセージアプリLINEスタンプからじわじわと勢力を拡大し、グッズ化・書籍化されているキャラクターですね。
現在『週刊Dモーニング』で連載中の、自分ツッコミくまが主人公となって各地の美味しいものを食べ歩くというイラストエッセイ『MOGUMOGU食べ歩きくま』が単行本化されたということで、発売日に購入いたしました。
今回は、『MOGUMOGU食べ歩きくま』を読んだ感想と自分ツッコミくまの魅力(作者のナガノさん像を交えて)について書いていこうと思います。
自分ツッコミくまとは
シュールで可愛いやつ
自分ツッコミくまはLINEのクリエイタースタンプのキャラクターであり、ラフに描かれた可愛らしいくまである。
言語の代わりに矢印で自分にツッコミを入れていることからこの名前が付けられたものと考えられる。
最近は少しずつ発言しているものも見られるので、くまの心境に何らかの変化があったのかもしれない。
日常を切り取ったシュールで可愛くてほっこりするような姿が特徴であるが、作者のナガノさんのTwitterで定期的に投稿されるイラストやブログを覗いてみると、くまが美味しそうに食事をしている姿が多く見られる。
今回紹介する『MOGUMOGU食べ歩きくま』はまさにくまの日常的な食事風景をイラストエッセイとしてまとめてあるので、買う前から面白さが保証できる。
白と黒のシンプルな配色が特徴のくまだが、本はもちろんフルカラー。
表情豊かなくまと美味しそうな料理が楽しめるのだ。
くまが普段食べているもの
くまが普段食べているものは、コンビニ弁当だったりホットスナックだったり、スタバ、チェーン居酒屋、ラーメン、自分で作る簡単なおつまみなど手に入りやすく比較的安価な食べ物が多い。
特に辛いものが好きなようで、恐らく作者のナガノさんが食事をして抱いた感想をくまに投影させていることから、ナガノさん自身の食事傾向や好みがそのままくまと同じものなのだろうと思う。
くまの性格
基本的に言葉を発しないくまの性格を推し量るに、非常に穏やかでのんびりしており、食べることが大好きである。
小心者で心配性な部分もあるが、興味のあるものに対する行動力も併せ持っている。
本の中ではくまが喋るというか、くまの心境をエッセイテイストで文字に起こしているので普段のモノ言わぬくまよりも感情の変化を読みやすい。
これを読んでみると、想像していたくま像とほぼ合致しているのが分かる。
MOGUMOGU食べ歩きくまの中身
くまが食べ歩く場所
本書の構成は、10回の食べ歩き+特別編としてトレーニングジム後のラーメンを食べるくまが収録されている。
食べ歩く場所は、高尾さんや浅草、上野、池袋など都内が多いが、台湾に飛び立ったりなどアクティブな食べ物探訪を行っているのがわかる。
遠出しているだけあって、うな重や目の前で揚げるタイプの天ぷら屋さんが出てくるが、値段の多寡にかかわらず美味しそうに食べるくまの姿には安心させられる。
美味しいものは美味しい、それでいいんだ。
お気に入りのお話
収録されているお話はどれも繰り返し読みたくなるほどテンポよく、くまが食べたいものを心行くまで食べ尽くすという爽快なものである。
そして読後はどこかへ食べ歩きに出かけたくなるくらいにワクワク感を与えてくれる。
そんなどれも魅力的な本書の中でも特に印象に残ったお話を2つ紹介してみる。
第8回目 近場のスパ
「一体これから何が行われるんだ・・・」と気になる出だし。
現代人の心身は日常生活でボロボロに痛めつけられている。
朝早く起きて仕事へ行き、一日の大半を職場で過ごす。
自宅に帰る頃にはすっかり夜も更け、わずかばかりの自由時間を楽しんだ後は明日の仕事に向けて英気を養う。
そんな毎日を繰り返して生活の原資を稼ぎ出し、生活を維持していくのだ。
頑張っている自分に、時々ご褒美をあげてもいいじゃないか。
「近場のスパに泊まる」。最高のご褒美だ。
確かに泊りがけになってしまうと少しハードルが上がる気がするが、好きな時間に温泉に入って、食べたいものを食べ、寝る。
自分を思いっきり甘やかし、時間の感覚を忘れるくらいに非日常にどっぷり浸かることができる。
いいなぁ、いいなぁ。今までの人生で2度スパに泊まったことがあるけれど、このお話を読んですぐにでも出かけたくなった。
↓実際に行ってきた記事はこちら。
そうそう、スパ特有の地味な着衣を身にまとって、腕には課金アイテムを引っ提げて何をしてもいい環境。
もはや治外法権。
朝っぱらからビールとつまみを楽しんで寝るのも正解。
「もうすでに来てよかったという気持ちになる」
わかる。
飲み過ぎて他の楽しみを削ってしまうのも野暮な話だ。
ビールは駆け付け一杯でいい。肴は炙ったイカでいい。
「やってやったぞ、という気持ち」
わかる。
岩盤浴はお楽しみの一つだ。
薄暗い部屋で横になり、無心に汗をかく。
最初のうちは「暑いけど、まだまだ汗が出る様子はないなぁ」と思っているけれど、ふと気づいた瞬間に身体の中心部まで温まって止めどなく汗が噴き出してくる。
不快だけど、不快じゃない。
汗をかくと疲れるけれど、身体の奥底から悪い成分が全て溶けだしているような感覚で疲れが取れていくような不思議な感覚。
本当に美味しそうに食べるよなぁ。
汗をかいてカラカラになった身体に水分+甘味が染みこんでいく。
運動後のポカリスエットは確かに美味しいんだけど、キンキンに冷えたコーラを飲んだ瞬間の「生きてる・・・ッ」感は異常。
露天風呂は爽やかな風や晴天・星空も大きな魅力だが、不思議とぐずついた天気との組み合わせも味わい深い。
雨の日のプール。的確な表現だと思う。
浸かっているお湯(水)の温度と雨の温度が違って、身体をうつ雨粒がくすぐったいような、それでも不快には感じない不思議な感覚。
雨の日の匂いも独特だ。通勤通学時の雨は鬱陶しいけど、休日の引きこもりを決め込んだときの雨ってどうしてこうもノスタルジックなのだろう。
第10回目 ドキドキカウンター天ぷら
カウンターで天ぷらを目の前で揚げてもらうというのは今まで経験したことがない。
電話が苦手というのはナガノさんなんだろうなぁ。
ちなみに手前にいる茶色いのは最近くまと絡んでいるコロッケもぐらである。
そうそう、未知の食事は興味深いけれど、勇気がいる。そして、ものによっては❝マナー❞や❝暗黙の了解❞が常に付きまとう。
郷に入っては郷に従え。適度なマナーはそれ込みで楽しめるけれど、それがガチガチのルールになってしまうと、せっかくの美味しいものが楽しめなくなってしまうので難しいところだ。
こういうのあるよね。
卑近な例になるけれど、初めて入るラーメン屋さんで食べ終わった丼をカウンターに
上げた方がいいのか、そのまま帰っていいのか迷うことがある。
大体の場合は上げて帰るのが正解だったりするけれど、「そんなところに置いて帰るなよ」というお店もあるだろうから、それを予感したときは周囲のお客さんの様子を伺ったりするよね。
あとは、伝票を差し置いていかないタイプのお店でレジに直行していいのか、あるいはテーブルでの個別会計なのか。これも様子を伺ってしまう。
別にどちらでもいい問題ではあるけれど、野暮なことはしたくないからね。
この素朴さがいい。
変に気取ったり知ったかぶったりせずに、目の前で起きている素敵なことに素直に反応する。
だからこそ親近感がわいて、安心して読み進めることができるのかもしれない。
お店のこだわりは緊張するけれど、考えに考え抜いた食べ方なのだろうから従うに越したことはない。
牡蠣の天ぷらは、フライとは違った磯臭さや内臓の甘みを感じて、これまた味わい深いものである。
今も昔も天ぷらの王様は海老だと思うが、普段目立たなくても天ぷらにすると抜群に美味しくなる食材が多いことに驚かされる。
舞茸、シシトウ、茄子の天ぷらなんて無限に食べられる。
そうだね。適度なルールがあるからこそ、その枠内で楽しみ尽くすことができる。
完全に自由よりも少しだけ縛りがあった方が物事はうまくいくことが多いんだ。
しゅっしゅっしゅっ。 しゅっしゅっしゅっ。
くまが幸せそうで何よりだ。
まとめ
本書は「自分ツッコミくま可愛いよね」と思っている方も、くまを知らない方も等しく楽しめる癒し成分大盛りのイラストエッセイである。
日常の何でもない光景をこうも魅力的で訴求力をもって発信することができるのも、ナガノさんが持っている素晴らしい感性が成し得るものである。
くま(ナガノさん)が見ている世界は、こんなにも優しく輝いている。