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【かにぱん、源氏パイ】『新 まだある。大百科@初見健一』終わりゆく平成とともに昭和から変わらぬロングセラーお菓子を語る

昭和は遠くなりにけり。

もうすぐ平成の時代も終わり、数年もすれば「平成の頃はさ~」「懐かしいねぇ」と言うのが当たり前になってきます。

まさに昭和なんて昔の昔。大昔なわけですよ。

最近、こんな本を買いました。

昭和の時代から変わらず愛されている食べ物の中でも、特にお菓子にスポットを当てて旧パッケージの紹介や製造の経緯、著者である初見健一さんの思い出話がこれでもかと詰め込まれています。

僕は昔から「大百科」だとか「大図鑑」のような特定のテーマに対してちまちましたデータや考察が所狭しと書き込まれている本が大好きなんですよね。

「大百科」なので、通読というよりも気になる部分をつまみ食い的にいくつか読んだものに自分の思い出を載せて紹介していこうというのが本記事の目的です。

そのため、不定期でいくつかに記事を分けて色々書いていくつもりですよ。

 

『かにぱん』

ほんのり甘くて遊び心いっぱいなあいつは1974年生まれ

僕のよく行くスーパーでもお菓子コーナーの端の方で細々と活動を続けているかにぱん。

ほんのり甘くて、飲み物がなくても飲み込める程度にしっとりふんわりしているパンとお菓子の中間のような存在。

確かにそうだ。思い出してみれば、駄菓子屋やお菓子コーナーにはあるけれど、パンコーナーに置かれているのはあまり見ない。

そして、お菓子の中でもまた特殊な立ち位置にいて、ポテトチップスやチョコレートよりも羊羹や煎餅というような重鎮ポジションに足を突っ込んでいる印象である。

それもそのはず。彼は1974年生まれの大ベテランなのだ。

 

かつては仲間がたくさんいました・・・。

製造元の三立製菓株式会社は、昔から切れ込みをちぎって食べるタイプの『カットパン』を得意としており、社名をつけた『サンリツパン』を1956年に発売している。

『かにぱん』は『サンリツパン』の派生形であり、それが今なお愛されるロングセラー商品の地位にまで登り詰めているのだ。

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しかし、成功の裏には数多くの失敗というのがつきものである。

かつて『かにぱん』には多くの同胞がいたらしい。パンダ型、タコ型、ウサギ型、さらには野球のグローブ型、ボウリングのピン型等々・・・。

言われてみれば「有りそう」ではあるが、実際見たこともないし聞いたこともない。

確かにカットパンの製法は様々な可愛らしいキャラクターの形のパンを作るのに向いている。

それなのに『かにぱん』以外根付かなかった理由は、蟹という間接の多い生き物は分解に適していて、食べやすくちぎるというカットパンの性質とマッチしたのだろうというのがメーカー側の推測である。

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↑発売当初のかにぱん。現在のものとほとんど変わっていないのがわかる。脇のびらびらは何なのか。

また、本の中で初見さんが書かれているように、実際蟹を食べるときも足を捥いで、爪を捥いでとバラバラにするため、自然な流れとしてかにぱんをバラバラにできる。

一方で、パンダやウサギのような哺乳類をバラバラにするという行為は一般的に残虐な行為であるし、良心の呵責という心的要因が作用して普及しなかったというのも極めて納得できる理由である。

ちなみに三立製菓株式会社の公式ページに「かにぱんブランドサイト(かにぱん)」というなんともワクワクする特設ページが用意されている。

「かにぱん.jp」、カッコよすぎる・・・。

かにぱんをちぎって特定の形を形成して楽しむ『ちぎってかにぱん』やかにぱんを全力で調理する『かにぱんクッキング』は見ものである。

 

『源氏パイ』

1965年生まれの大御所、製造はまさかの・・・

ハート型の可愛らしいフォルムと軽い口当たり。カリッとした❝ふち❞とジャリっとした砂糖の食感が心地良い『源氏パイ』。

くどくない甘さが後を引いて、何枚でも食べれそうな魅惑のお菓子である。

先ほどのかにぱんよりもさらに先輩で、『源氏パイ』を食べたことがない人の方が少ないことだろう。お菓子コーナーでも目立つ位置に鎮座する姿はまさに王者の風格。

こんなに凄いお菓子を発明したのは誰なのか。そういえば『源氏パイ』の製造メーカーを知らないな。どれどれ・・・。

三立製菓株式会社

またあなたか。どこまで有能なんだ。

 

当時の❝不可能❞を❝可能❞にした三立製菓株式会社

今でこそパイ生地を使ったお菓子は気軽に手に入れることができるが、1960年代ではパイ菓子はあくまで洋菓子屋さんの商品であって、製法としても手間とコストがかかるパイ菓子を量産することは不可能とされていた。

三立製菓株式会社は源氏パイを開発する1年前である1964年に当時の常識を覆す『サロンパイ』の量産化に成功する。

飽くなき探究心は止まらず、ヨーロッパに古くから伝わるハート型の伝統的パイ菓子『パルミエパイ』の量産化に挑戦し、翌年には完成した製法を活用した『源氏パイ』を発売する。

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現代の産業革命である。

 

名前の由来

発売の翌年にNHKが大河ドラマ『源義経』を放映することが発表されたことから、この国民的人気番組にあやかろうと『源氏』の名前をつけたそうだ。

また、『源氏パイ』の母と言える『パルミエパイ』のハート型が合戦で用いられる鏑矢(かぶらや)に似ていることから『源氏』の名前を付けたという説もある。

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↑発売当時の源氏パイ。この頃から変わらぬフォルム。個包装の袋に鏑矢が描かれている。

 

『平家パイ』もあるよ!

源平の合戦

数年前にスーパーで『平家パイ』という商品を見つけた。

「こんなん源氏パイのパクリですやん」

と思ったが、『源氏パイ』と同じ会社ロゴマークがついていて「そうか、マイナーチェンジか」と納得したのを覚えている。

実はこの『平家パイ』、発売は2012年でその年にNHK大河ドラマ『平清盛』が放映されることを受けて名付けられたそうだ。

1965年の『源義経』、約50年のときを経て2012年の『平清盛』。粋なことをしてくれるじゃないか。

盾に矢を受けてしまってな・・・

平家パイはパイ生地が平積みされており、源氏パイとは全く異なった食感をしている。

また、特徴的なのは表面にあしらわれたレーズンは、源平の合戦で源氏が放った鏑矢を平家の盾で受けた瞬間をイメージしているそうで、かつて栄華を誇っていた平家の高貴さを表現する紫色を表しているそうだ。

いちいち演出がニクい三立さん。

ちょっくら源氏パイと平家パイ買い占めてくるわ。

 

まとめ

端書で初見さんが書かれている、

ああいう感じの、無駄に厚くて、絵や写真がいっぱい載っていて、しかもまったく何の役にも立たない「大百科」を僕も作ってみたいなぁ・・・とずっと思っていたので、本書にもそういうテイストを盛り込んだつもりです。

ごくごく気軽な気分で、お菓子でも食べながら「つまみ読み」をしていただければと思います(出典:新まだある。大百科「はじめに」) 。

自分の目指すブログの形というのがこの数行に現れている。

時々有益なことも書くかもしれないけれど、基本的にはどうでもいいようなことを面白おかしく読者の方に提供していけたらいいな、というのが根底にある。

目を血走らせて読み込むというよりも(血走らせる要因もないのだけれど)、お茶でも片手に息抜きとして読んでもらえるのが理想である。

まだまだ紹介したいお菓子があるので、気が向いたら記事にしていきたい。