僕は料理を作ることが好きで、気に入った調理道具はとことん使い込んで手に馴染ませていきたいという考えを持っています。
例えば今回取り上げるフライパンにしても、以前はテフロン加工のものを使っていたことがあるのですが、寿命が来て取り換えるのがなんだかもったいない気がして、10年ほど前から鉄製のフライパンを愛用しています。
「鉄のフライパンは育てていくもの」と言いますが、使い込んでいくほどに油が馴染んで食材が焦げ付かず中心までしっかりと熱を伝えてくれます。
しかしながら、同時に2本目のフライパンを育て始めたいとも考えており、以前から気になっていたビタクラフトのフライパンを購入したのです。
その使用感を後日記事にしようと考えているのですが、その前に鉄製のフライパンの特徴をテフロン加工のものと比較して書き出してみようと思います。
鉄製とテフロン加工の違い
鉄製のフライパンの特徴
『鉄のフライパン』と聞くと、「すぐ焦げついちゃうんでしょ?」「取り扱いが難しそう…」という印象を抱く人が多いと思います。
確かに鉄のフライパンにはいくつかのお作法があって、これを守らないと真価を発揮できないばかりか錆びついて使い物にならなくなります。
基本に忠実に使えば何年・何十年も相棒として活躍し続けられますし、とにかく丈夫で高火力に耐える強さを持つのが特徴です。
以下では扱いが難しいと思われている鉄フライパンの使用上の注意事項について書いていきます。
使用前
【火入れ】
購入したばかりの鉄のフライパンの表面には酸化防止剤(錆止め)のコーティングがあるため、これを焼き切る必要があります。
強火で白煙が出るまで熱し続けると錆止めの黒が薄れて、鉄本来の色(熱したときは虹色・玉虫色のような光沢)が出ます。
家庭用のコンロの多くはセーフティ機能が付いており、一定時間強火を出し続けると自動で火力を調整されてしまいますので、ガスコンロやバーナーを使うのもありです。
【油ならし】
次にフライパンに油を馴染ませる作業です。
錆止めを焼き切ったフライパンの粗熱が取れたら表面をサッと洗います。
この際は洗剤とスポンジを使いましょう。
再びフライパンを火にかけ、十分に熱したらサラダ油やオリーブオイルを大さじ3杯ほど入れて、塗り込みます。
縁の方は油が回りにくいのでクッキングペーパー等を使って丁寧に塗り込むといいです。
その後、くず野菜(野菜の切れ端等何でも)を炒めることでさらに油を馴染ませていきます。
使用中
鉄のフライパンを使用するときは火力と油の量が重要になります。
十分な火力で白煙が出るくらいにフライパンを熱したら、「ちょっと油入れ過ぎたか」と思うよりももう少し多いくらいの油を投入し、その高火力のまま調理します。
熱伝導率の高い鉄のフライパンでは食材にすぐに火が入るので、基本的に短期決戦になります。
使用後
【すぐに汚れを落として水気を飛ばす】
鉄のフライパンは使用後すぐに汚れを落として水分を飛ばしておかないと錆の原因になります。
そのため、調理済みの料理をフライパンに残して一晩放置する等は極力避け、フライパンがまだ温かいうちにぬるま湯で汚れを落とす必要があります。
洗う際には専用のブラシでもいいですが、簓(ささら)やたわしで豪快に洗っても大丈夫です。
汚れが落ちたら軽く拭いて火にかけます。完全に水気を飛ばすのが肝心です。
火加減や油ならしが不十分だと焦げ付いたりすることもありますが、そういうときは金だわしやクレンザーを使って焦げを削り取って上げてください。
錆びついてしまった場合も同様です(擦る前に強火にかけて錆を酸化させること)。
【油を馴染ませておく】
使用前の時ほどではないですが、キッチンペーパー等を使ってフライパンに油を塗っておきます。
こうすることで次に使うときも焦げ付かず心地いい使用感を保つことができます。
なお、長期間使う予定がない場合には新聞紙等でくるんで湿度の低い場所に保管するといいです。
鉄製のフライパンの長所・短所
鉄フライパンのここがイイ!
- 熱伝導率が高いので短時間でしっかり食材の中心まで火が通り、外はカリッと中はしっとりに仕上がる。
- とにかく丈夫なので、管理さえしっかりすれば何十年もの使用に耐える。
- 使用するごとに油が馴染み表面をコーティングするので、フライパンが育ち使いやすくなる。
- 調理の過程でフライパン表面の鉄が微量加わるので、不足しがちな鉄分を補給することができる。
- プロっぽい←ここ重要!
鉄フライパンのここがアカン!
- 購入してもすぐに使えるわけではなく、準備があって面倒。
- 世話を怠るとすぐに錆びる
- 基本的に高火力で調理するため、夏の時期は辛い。
- 料理にもメンテナンスにも大量の油を消費する。
テフロン加工のフライパンの特徴
手軽さが最大の売り
テフロン加工のフライパンは表面をフッ素でコーティングされており、素材がこびりつきにくく、焦げにくい特徴があります。
鉄製のフライパンのように、十分に火入れをしてから油ならしをする必要もなく、購入してすぐに使い始めることができます。
汚れもつきにくく、表面をスポンジでサッと洗うだけで清潔な状態になるため、管理がとても楽です。
使用後は水気を拭き取っておけばそれでよし。
空焚き・強火での運用はNG
お手軽で安定した実力のテフロンですが、弱点があります。
耐久性に難があり、使い方によってはすぐに寿命を迎えてしまうことです。
テフロンの特徴として、「高温に弱い」ということが挙げられます。
フライパンなのに高温に弱いというのも変な気がしますが、確かに通常の用法で焼いたり煮込んだりする分には180℃程度が限度なので問題はありません。
しかし、白煙が出るまで空焚きをすることやそれに近い状況で過熱を続けることにより200℃を軽く超す温度にってしまうとテフロン樹脂が分解されてしまいます。
また、調理中に硬い調理器具で鍋底を擦ったりすればたちまちテフロンは剥離して料理の中に混入してしまいます。
高温で使用してはいけないし、テフロンを気にしてたわし等でごしごし洗うこともできない。
実はテフロン加工のフライパンの方が鉄製のものよりも扱いが難しいかもしれません。
テフロン加工のフライパンの長所・短所
テフロン加工のここがイイ!
- 使用前の面倒な準備は一切不要で購入後すぐに使い始めることができる。
- 焦げにくく、こびりつきにくさに定評あり。
- 後片付けや保管も鉄製のものに比べて楽
- 軽くて使いやすい。
テフロン加工のここがアカン!
- 強火厳禁のため、高火力でサッと作りたい料理に不向き。
- 乾かすための空焚きもダメ。
- テフロンは傷つきやすく脆いため、硬い調理器具はNG。
- テフロンの剥離は不可避であり不可逆であるので、フライパンとしての寿命はせいぜい数年。
- 管理が楽そうに見えて禁止事項が多い。
【用途別】こんな人にオススメ
鉄製フライパン
使い始めや保管方法に制約はあるけれど、極めて丈夫な鉄のフライパンは高温でガンガン熱したり鍋底を引っ掻いてもビクともしない丈夫さを持っています。
肉料理や炒めものなど高火力で素材の旨味を閉じ込める料理をよく作る人にオススメ。
使い方を間違わなければ何十年も使えますし、どんどん進化していく楽しみがあります。
テフロン製のフライパン
とにかくお手軽で安定した使用感が魅力です。
火加減と傷にさえ気をつければ、なめらかなテフロンコーティングで焦げ知らずの汚れ知らず。
ただ、テフロンは使用の度に剥離して、次第に食材が焦げ付いたりするようになって来ますので、何年かに一回買い換える消耗品という位置付けで考える方にオススメです。
まとめ
一長一短のフライパン事情ですが、どちらも使用した感想としては、鉄のフライパンの管理は一見面倒くさく見えるけれど、むしろテフロン加工よりも豪快に使うことができて育てる楽しみがあるという点で鉄製を推させていただきます。
鉄パン普及委員会からは以上です。