美味しい蕎麦が食べたい。
単純かつ純粋な動機が人を動かすのです。
数日前に神楽坂の中華の名店・龍朋で絶品大盛りチャーハンを食べたばかりですが、今度は暖かいので冷たくて美味しい蕎麦を求めてお出かけをしてきましたよ。
↓龍朋のチャーハンレポートはこちらから。
肝心の場所なのですが、最近小旅行で利用した西武新宿線の小平駅においしい手打ち蕎麦と日本酒を出す店があるということを知り、小平に決定。
小平駅北口から徒歩5分の位置にある『手打ちそば 吟』にお邪魔してきましたよ。
まずはジャブで南口駅前を見学
鉄柱と鉄柱の間からこんにちは。どうも、小平駅です。
小平駅の北口側には高層のビルや商業施設が分布しており、大きなバスロータリーと中心部に構える色とりどりの花がトレードマークである。
植物の管理・整備に心血を注いでいる自治体にハズレはないというのが持論なので、小平市もきっと居心地のいい場所なのだろう。
謎のマスコットが並んでいた。
調べてみると左が小平市のマスコット「ぶるべー」で、右がFC東京のマスコット「東京ドロンパ」というらしい。
FC東京は小平市に練習グラウンドを有しており、市主催のイベントに参加したり、サッカー教室を開いたりと協力関係にあるそうだ。
そして、こちらのモニュメントはFC東京創設20周年を記念して2018年に建造された。
写真は普通のポストだが、小平市は「丸ポストの街」としても有名だそうだ。
各人に携帯電話が普及して公衆電話はなりを潜めている一方で、郵便ポストはまだまだ現役だ。ポストが消えることは今後もないだろう。
お目当ての蕎麦屋目指して北口へ
翻って北口へ。南口に比べると人通りが少なく落ち着いている。
綺麗に整備された花壇も好きだが、道端に咲く可憐な花も憂いがあって好きだ。
目的地は歩いて数分のところにあるので、周辺を軽く散策してみることにする。
『清風公園』
今日は休日だが、誰もいない。無人の公園というのはいつ見ても詫び寂びがある。
鉄棒、ベンチ、滑り台、左に見切れているところにブランコ。
お手本のような公園である。やはりこの構成が1番落ち着く。
あまり知らない地をぶらぶら歩くのはいいなぁ。
手打ちそば 吟
さて、目的地の『手打ちそば 吟』に到着。まっすぐ向かえば駅からすぐの場所だ。
皆ニコニコ平和に過ごせればいいけど・・・
お店の入り口には注意書きが置いてあった。
中学生未満の子供連れが店の備品を壊して、あろうことか黙って逃げるという事件が立て続けに起こったことが原因だそうだ。
これは怒っていいし、出禁にしてもいい。
小学生が自分たちだけで「ちょっくら蕎麦食っていくかぁ」なんて言わない。
きっと親が一緒にいたはずだ。故意に壊したかどうかはわからないが、それを見ていた親ができることは見て見ぬ振りをして逃げることだろうか。いや、違う。
見る人が見れば、「子供連れに対する差別だ!」と声を荒げるかもしれないが、お店を利用するのならば経営者のルールに従わなければならない。経営者側も客を選ぶ権利がある。
こじんまりとした静かなお店
気を取り直してお店に入るとしよう。
中は10人ほど入ったら満席になるだろうか。こじんまりとした作りである。
並んで待つことを覚悟していたが、先客は2組のみ。
店内はBGMが流れておらず、蕎麦を打つ音が聞こえる他は先客のお喋りが少し耳に入ってくるくらいだ。
メニューを供される。
基本の『もり』、みぞれ蕎麦にとろろ、メニュー裏には卵を使った蕎麦メニューが書いてある。
とりあえず、もり蕎麦一枚を注文し、本日したかったことを実行する。
「お酒ってありますか?」
俗に言う“蕎麦前”である。蕎麦を打って茹でて締めるまでにはそれなりに時間がかかる。
前回立ち食い蕎麦について記事を書いたが、あちらがファストフードなら、こちらはスローフード。
「おまかせのぐい呑みがあります」
「ではそれでお願いします」
大人の嗜み、蕎麦前
3分ほどして日本酒とお通しが到着。
『酉与右衛門(よえもん)』という初めて飲む銘柄だ。
岩手県花巻市で少量製造しているという貴重な日本酒。
“酉”+“与”は“酔”の旧字体で、現代ではそのまま使えないためにも字にしているとのこと。
お通しは出汁昆布を刻んだものと油揚げが和えてある。
さてさて、蕎麦前を楽しむことにしよう。
酉与右衛門をスッ…と一口飲んでみると、生酒のフレッシュさと独特のプチプチした炭酸が弾ける様を楽しむことができる。
蕎麦前ビギナーなので詳しいことは分からないが、蕎麦屋で扱う日本酒は水のようにさらりと穏やかでスルスル飲めるタイプを想像していたので驚いた。
しかし、不思議なものでお通しをつまみながらちびちび飲んでいくと、角が取れてだんだんと舌に馴染み、まろやかに感じてくる。
これはいいものだ。よえもん、覚えておこう。
DNAレベルで好きだ
のんびりまったり飲みながら10分ほど経った頃にお待ちかねの蕎麦が提供される。
蕎麦のザルが小さく見えるが、底が深いので十分な量が確保されているため安心だ。
蕎麦つゆはこれで全部。蕎麦を食べる分には十分だが、蕎麦湯のことを考えると少し調整が必要かもしれない。薬味はネギと辛味大根。
さてさて、いただくことにしよう。
おお、この蕎麦旨い。
コシがあって瑞々しく、もちもちとした食感の後に甘みと蕎麦の香りがふわっと現れる。
薬味が甘みをキリリと引き締め、だれることなく次へ次へと蕎麦を箸で手繰り寄せてしまうほどだ。卓上に七味が用意されていたけれど、付属の薬味のみで必要十分な気はする。
温かい蕎麦もいつか食べてみたいけれど、このタイプの蕎麦はシンプルな❝もり❞が最も魅力を引き出すだろう。
DNAレベルで好きだもの、美味しく感じるのにそれ以上の言葉は要らない。
とろっと濃厚な蕎麦湯を楽しむ
評判通りの実力を感じさせる蕎麦を食べられて満足である。
ここで〆の蕎麦湯を忘れてはならない。
見るからにとろとろの濃厚な蕎麦湯だ。
最初に危惧していた「つゆ枯渇問題」は現実のものとなり、ほぼ蕎麦湯単体として飲むことになった。
当然口当たりは濃厚なのだが、甘みがあまり主張せず飲みやすい。単体でも何の問題もなく完飲だ。
蕎麦湯を飲み干して、少し余韻を楽しんでからお会計。
もり720円+酉与右衛門(よえもん)480円で1,200円。
税込みでお通しもここに含まれているのか。なんというコストパフォーマンス。
ゆっくりまったりと蕎麦を楽しむには最高の環境ではないだろうか。
わんわんわん。
この後は近辺を散策する予定なのでお酒は1杯にしたが、それを気にしなくていいならば他の酒肴も試してみたかったな。
道端のツツジも満開だ。
ここに咲いているのはすべて躑躅色(←つつじいろ。難しい・・)だが、白いツツジや薄ピンクのツツジ、珍しいものでは白にピンクのラインが入っていったり、その逆もあったり。
同じように梅の花などに起こるこの現象を❝源平咲き❞と呼んだりする。
平安時代に起こった源平合戦で源氏が白旗を、平氏が赤い旗を使っていたことに由来するとかなんとか。
メカニズム的には赤い色素の成分であるアントシアンが上手く生成できないときに白い花になるらしいが、品種改良をして従来の躑躅色の花を白に寄せているものもあるので、確かなことは分からない。
駅前のファミリーマートの2階は卓球場だ。
卓球クラブの方は喉が渇けばすぐに飲み物を買えたりして便利だが、コンビニ側は上の階から「キュッキュッ!タンタン!」と音と振動に悩まされそう。上手く付き合っているのだろうか。
こうして駅に戻ってきた。なかなか散策しがいのある適度に整備された土地なので、また時間を見つけて遊びに来ることにしよう。
まとめ
お店としては悲しい事情があって、現在は小学生以下の子供は入店禁止の店になっているが、これが逆に❝大人の店❞を演出して隠れ家的な魅力を醸造している。
蕎麦もお酒も一級品。近くに寄ったときには是非お邪魔したい、居心地の良さと確かな実力を感じさせる名店だ。
実は今回が初めてのひとり蕎麦前デビュー。こんなにいいものだと思わなかった。
デビューを華々しく飾ってくれた『手打ちそば 吟』には感謝である。
↓色々グルメを求めて旅をしています。