着実に近づく秋の足音。
子供の頃は、秋は大きなイベントがなくぱっとしないなと思っていましたが、今となっては冬の寒さに向けた静かな準備期間が何とも心地いいです。
さて、今回3回目となるRADWIMPSの歌詞考察は、メジャーで知っている方も多いであろうあの曲。
『最大公約数』です。
↑この連載の趣旨及び経緯はこちらの記事をご覧ください。
『最大公約数』歌詞考察
❝違うこと❞を受け入れよう
僕の2歩は君の3歩 僕の4歩は君の6歩
そんな風にこれからも歩いていければいいと思うんだ
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
身長が違えば歩幅が違って、僕が普通に歩くと君よりも先に進んでしまいます。
僕の歩く速度は君の1.5倍で一見合わせるのは難しく見えるけれど、4歩と6歩の最大公約数❝2❞で合わせることはできるんだから、焦らなくていいんだよと優しく語り掛けます。
奇跡はたまにあるから尊いんだ
君が想うこと それが同時に僕が想うこと
そんな奇跡は必要ないよ タダであげるって言われても
パパとママが心だけ隠して生んでくれたのには それなりの理由があった
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
君と僕とがぴったり同じである必要ないのです。
食の好みが違ったって笑いのツボがズレていたって、惹かれ合って二人は一緒に居るのだから、時々「同じこと考えてた!」という奇跡が尊いのです。
いつも同じじゃつまらないかもしれないですよね。
二人で見つける最大公約数
だから二人は
忘れないように確かめ合って 途切れそうな夜を繋いだんだ
溢れないように分け合って だからそう
何を与えるでもなく 無理に寄り添うわけでもなく
つまりは探しに行こう 二人の最大公約数を
声にならぬ想いは 無理に言葉にするでもなく
いつか僕もわかる時まで...
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
何もかもが同じではないから二人の間に摩擦が生じて、時には窮屈に感じて喧嘩もしたりするけれど、そこでお互いの妥協点を導き出してまた歩いていける。
そんな日々を繋いでいって今の二人がいます。
「僕が君に何かを与えること」「君が僕に何かを与えてくれること」、そういった損得勘定で動くのではなく、また、相手の機嫌を伺いながら無理に合わせる必要もない。
お互いが自分らしく心地いい関係を続けていけたら幸せだから、二人の納得し合える最大公約数を見つけていこうと未来に対する誓いを立てていきます。
今分からないことも時が解決するかもしれないし、いつまでも分かり合えないこともあるかもしれないけれど、全てを理解することなんて今までの人類の歴史でも不可能なのだから気楽に考えていこうよという励ましと自身に対する鼓舞も含まれているのでしょう。
君は君で僕は僕
君の心は僕の2倍 僕の小指は君の2倍
一つわかっててほしいのは 愛されたい気持ちは君の5倍
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
僕よりずっと身体の小さな君は、僕の2倍の心を持っていて大らかに僕を包み込んでくれるけれど、僕は君のことが大好きだから分かりやすい愛情表現をたくさんほしいなと感じているのかもしれません。
それが「愛されたい気持ちは君の5倍」に現れているのですが、彼女にとっては精一杯の愛情表現なのかもしれないので、無理を強要しない僕の優しさが出ている印象です。
3と100は分かり合えないのか?
「別れよう」って言われる2秒手前 涙はかろうじてまつ毛の手前
本日100回目のごめんね 呆れて君は笑ったね
別れる理由3つあるなら 別れない理由100探すから
カランコロンカランコロンきっと
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
今まで何回も喧嘩をして別れ話も顔を出した僕と君との関係だけど、その度に繋ぎ直して仲直りすることができていました。
ここで上手いと思ったのが、「別れる理由3つ」と「別れない理由100」の対比です。
3と100の最大公約数は1。
全然共通点がないじゃないかと思えますが、どんな数同士であれ1という最小にして最大の公約数が間に隠されているのだから、理解し合える可能性はゼロではないのです。
どんな数字同士でも分かり合える部分はある、そんな勇気を与えてくれるフレーズですね。
いつかわかるその日まで
とれそうなポッケ覗いたんだ 消えそうな想い詰め込んだんだ
崩れそうな夜も超えたんだ 二人で
僕が君に描く想い 君が僕に描く想い
違ったって一つじゃなくたっていいと思う
分かり合えない想いは 無理に頷くでもなく
いつかの楽しみに そう とっとこ
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
今までの歌詞の中で繰り返し出てきたように、僕と君は何度も破局の危機を迎えています。
でも、裏返せばその数だけ仲直りをして絆を深め合ったということです。
そして、今はどうしても理解できないこともこの先の未来で「なんだ、そういうことだったんだ!」「そう言ってくれればよかったのにぃ」と肩をたたき合って笑える時が来るかもしれません。
分からないということは悲しいことではなく、いつか分かるかもしれないという楽しみでもあるのです。
そこにきっとあるはず
何を求めるでもなく 無理に意味を添えるでもなく
つまりは探しに行こう 二人の最大公約数を
僕は僕で君は君 その間には無限にあるはずだよ
二人だけの公約数
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
お互いの考えを押し付けるわけではなく、無理やりに飲み込むでもなく、お互いが納得できる妥協点(最大公約数)を見つけていこう。
数学の定義では、公約数は二つの整数に共通な約数としているけれど、僕と君の間ではここに小数加えて、
1と2の間には「1の他に0.1、0.2、0.4、0.5という5つの公約数があるんだぞ」って言い張っても許されるでしょう。
0.01もあるし0.25だってありなのです。
二人だけの正解を見つけよう
君が8なら 僕は2になる 僕が10なら 君は5になる
君+僕は何だろう 僕-君は何だろう
雨のち晴れのち曇り 僕のち君のちつまり
そうやって これからだって やっていこう
(『RADWIMPS3~無人島に持っていき忘れた一枚~』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)
二人の間には最大公約数が必ずある。君と僕とを足したり、僕から君を引いたりして、ちょうどいい数字を見つけていこうねと様々な試練の乗り越え方を提示しています。
きっとそうしていかないと乗り越えられない壁もあるでしょうし、乗り越えた場所から見た景色はきっと輝かしく素晴らしいものになるでしょう。
総評
RADWIMPSの曲の中でも最メジャーと言えるくらいに多くの方に聞かれている『最大公約数』。改めて聞いてみるとふんわりとした優しさとゆるくて力の抜けた人間関係の構築と学ぶことが多いことに気づきます。
歌詞に出てくる君と僕の恋愛模様だけではなく、友達だって家族だって職場の人間関係だって違う考えを持っているからこそすれ違いもあるけれど、その分理解し合えたときの喜びも大きいのだと思います。
自分と相手のベストの最大公約数、見つけていきましょう。
まとめ
先に紹介した『ソクラティックラブ』と『me me she』が切ない恋愛が描かれていましたが、今回は「仲直り」がメインテーマの前向きな曲になりました。
次回はまたテイストの違った活力溢れる曲を考えておりますので、しばしお待ちを。