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僕が選択した❝美しいもがき方❞とは?RADWIMPS『スパークル』の歌詞の考察記

人間に体調や精神状態の浮き沈みがあるように、空も毎日違った表情を見せます。雲一つない突き抜けるような青空や泣きそうな曇り空。東京では見える星は少ないですが、夜空をぼんやり眺めるのもいいものです。

ただ、日常を忙しなくルーチンで過ごしていると空を見上げる機会が恐ろしく少ないことに気づきます。

頭の上にはせっかく日替わりの芸術作品が用意されているのに、それを見ないのは勿体ないですよね。

今回4回目になるRADWIMPS歌詞考察は、まさに星空との親和性が抜群の『スパークル』を取り上げたいと思います。映画『君の名は。』の挿入歌でも有名ですよね。

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↑連載の趣旨及び経緯はこちらの記事をご覧ください。

『スパークル』歌詞考察

❝時❞に抗うというもがき方

まだこの世界は 僕を飼いならしてたいみたいだ

望み通りいいだろう 美しくもがくよ

互いの砂時計 眺めながらキスをしようよ

「さよなら」から一番遠い 場所で待ち合わせよう

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

 ❝僕❞は現状の生活に納得していない様子ですね。

「飼いならす」という表現からも、僕は不満を抱えながらもそこから脱出することができておらず、方法もつかみ切れていないようです。

❝僕❞には好きな人がいるのですが、「互いの砂時計」を気にしながら会うことしかできない、つまり絶対的な障害としての『時間』が二人の間には存在します。

時計

いつまでも一緒に居たいけれど、残酷にも時が二人を隔ててしまう。だから少しでも「さよなら」から遠い場所で待ち合わせしようと言っているのですね。

 

君に出会ってからが全ての始まり

ついに時は来た 昨日までは序章の序章で

飛ばし読みでいいから ここからが僕だよ

経験と知識と カビの生えかかった勇気を持って

いまだかつてないスピードで君のもとへダイブを

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

 ❝君❞と出会う前の僕の人生なんてもうどうでもよくて、君と合った瞬間からが僕の人生の始まりだと断言するほどに恋焦がれています。

人生を変えるほどの人に出会えたのだから、今までの薄っぺらな人生の中で得たものを全て振り絞って君に会いに行くと誓う僕。

 

酷く退屈な生活にさようなら

まどろみの中で生ぬるいコーラに

ここでないどこかを 夢見たよ

教室の窓の外に 電車に揺られ運ばれる朝に 

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

生きているんだか死んでいるんだかわからないような、生ぬるいコーラ(気の抜けた)酷く退屈した生活に嫌気が差していた僕は、ここではないどこかに行きたいと強く願います。

 

不確実な未来より確実な今がいい

運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を 伸ばそうと届かない

場所で僕らは恋をする

時計の針も二人を 横目に見ながら進む

こんな世界を二人で 一生、いや何章でも

生き抜いていこう 

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

 「運命」や「未来」という不確実なものに縛られない、どこかで僕たちは恋をしていきたい。

物言わぬ時計の針には縛られているけど、それはこの世の定めで従うしかないのかな。こんな不自由な世界でも、君と一生どころか何度でも一緒に居られたらいいなというのが僕の偽らざる気持ちなのです。

 

時間の密度

「はじめまして」なんてさ 遥か彼方へと追いやって

1000年周期を一日で息しよう 

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

二人は何度も会うことになるから、「はじめまして」なんてよそよそしいのはやめて、1,000年を一日に感じるくらいに胸に刻み付けるくらいに濃密で忘れられないような時間にしようと語り掛けます。

 

定義づけられた秩序ある世界の歩き方

辞書にある言葉で 出来上がった世界を憎んだ

万華鏡の中で  八月のある朝

君は僕の前で ハニかんでは澄ましてみせた

この世界の教科書のような笑顔で

 (『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

万華鏡の中で千変万化するようなキラキラした景色を映し出すこの世界は、分解してみれば辞書の言葉を使って一義的に定義が定められた正確無比で詰まらないものだった。

辞書

そんな世界ではすべてが論理的に展開されていき、❝奇跡❞というものが存在しないようにすら思える。

でも、僕はこの世界で君に出会うという奇跡を目にした。

君の笑顔は僕には眩しすぎて、その笑顔が女神のものだと言われたらそう信じてしまうし、この笑顔が世界を平和にすると言われたら頷いてしまいます。

君が考えていること、これからしようとしていること、立ち振る舞い、それらはすべて理想的で、この世界の教科書に指定したいくらいなのです。

 

君が世界のすべてだった

嘘みたいな日々を 規格外の意味を

悲劇だっていいから望んだよ

そしたらドアの外に 君が全部抱えて立っていたよ

(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

 退屈でつまらなかった僕の日常は❝君❞という規格外の存在で見事に吹き飛んでいきました。

僕が見たかったもの、聞きたかったことは全て君が持っていたようです。

 

目の前の奇跡を祝おう

運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を

伸ばそうと届かない 場所で僕ら遊ぼうか

 (『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

「不確定な未来」だとか「離れ離れになってしまう運命」なんていらない、今ここで会えているという事実だけを抱きしめて生きていきたい、そんな想いが伝わってきます。

 

モノには終わりがあるということ

愛し方さえも 君の匂いがした

歩き方さえも その笑い声がした

いつか消えてなくなる 君のすべてを

この目に焼き付けておくことは 権利なんかじゃない 義務だと思うんだ

 (『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)

 人を大切に思う気持ちは君から教えてもらったし、一人で歩くのは寂しすぎる。

しかし、僕と君は時間という絶対的な障害で隔離されてしまう運命なのです。今は鮮明に覚えている君の匂いも声も、時間が経つにつれて曖昧になってくるかもしれない。

人間とはそういう風にできているのだから。

だけど僕はそれに抗って絶対に忘れないよ、記憶に体に焼き付けておくよ。

 

美しくもがく

運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を

伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする

時計の針も二人を 横目に見ながら進む

そんな世界を二人で一生、いや何章でも

生き抜(『人間開花』作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎)いていこう

 

 もはや「時」という概念が煩わしいほどに、今という儚くて尊い瞬間を全身全霊で受け止めている僕ですが、たとえ時間が二人を分かつことがあっても、命という有限が尽きようとも、何度も何度も僕は君と❝今❞を生き続ける。

それが僕の正解なのでしょう。

 

総評

優しく壮大なメロディーに乗せて、退屈な日常な日常にうんざりしていた❝僕❞と彼の生きる理由・道しるべになった❝君❞との時を超えた恋愛模様を描き出すスパークルは、映画『君の名は。』の世界観に見事マッチして聞くたびにあの星空が眼前に広がって来るようです。

いつものなよっとした男ではなく、力強さすら感じさせる❝僕❞が頼もしいですね。

 

まとめ

今回で4曲目になる歌詞考察の記事ですが、どの曲も甲乙つけ難く残り6曲もどこから紹介していこうかと悩んでいるところです。

次回はまたテイストが異なる激しめの曲を考えておりますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。