実りの秋。今年も蔵開きの季節がやってきました。
(http://www.sawanoi-sake.com/kuramoto/21853.html)
東京都奥多摩にある酒造『小澤酒造株式会社』が主催する年に一度の大イベント。毎年10月の第4土曜日に開催され、今年で13回目を数えます。
土日にもそれなりに人が集まる澤乃井ですが、この日は酒に飢えた呑兵衛たちが奥多摩の自然に囲まれながら澤乃井の益々の繁栄を祈り飲んで食べまくるという牧歌的な祭事が行われるというわけです。
今回はそんな澤乃井の蔵開きに参加してきましたので、当日の様子を写真で振り返りつつ戦利品も紹介し、来年に向けての猛プッシュをするという記事になります。
澤乃井蔵開きの必須アイテム『蔵開き満喫チケット』
満喫チケットの中身を詳細解説
蔵開きのメイン会場になる小澤酒造株式会社及び澤乃井園は青梅線・沢井駅下車徒歩5分ほどの距離にあります。
駅から出てすぐの坂道をひたすら下っていけば着くので特に説明は必要ないと思いますが、上の記事では一応小澤酒造までのルートを説明しています。
坂の終着点の左手が小澤酒造なのですが、蔵開きのメインともいえる利き酒に参加するためには『蔵開き満喫チケット』というアイテムが必須なので、まずはこちらを購入します。
販売所は坂の右手側。1人1,000円でチケットを販売しています。
内訳
①蔵開き満喫チケット
まずはチケット本体。青い蟹のスタンプが既に押されていますが、これが利き酒の入場券になります。
左端の青い三角は、お隣の御岳駅近くにある「玉堂美術館」の入館券(大人500円、子供400円)です。後述するように玉堂美術館は先日の台風の影響で一時休館中なので、この入館券は今回使えません。
ちなみに2020年の3月末までは有効だそうですよ。
右端は既に切り取られていますが、こちらには澤乃井園の近くにある「櫛かんざし美術館」の入場券(大人600円、学生500円、小学生以下400円)になります。
もうこの時点で1,000円超えているので採算度外視ですよね。
②きき酒リスト
こちらは今年の利き酒の一覧です。
利き酒は小澤酒造の酒蔵の中を見学しつつ通路にコーナーが用意されており、順路に沿って11種類のお酒を楽しむことができます。
③蔵開きマップ
蔵開きの各会場へのルートを案内したマップです。
メイン会場である小澤酒造・澤乃井園の他にも先ほど紹介した『玉堂美術館』と軽食を楽しむことができる『いもうとや』が御岳駅方面にあります。
また、その反対側である軍畑駅方面には『煉瓦堂朱とんぼ』という屋台でお酒や食べ物を買って自由に食べることができるスペースやオリジナル酒器を作ることができるワークショップ、ライブステージが用意されており、お祭り感が強い会場ですね。
当日は各拠点を繋ぐ無料のバスが出ていますが、先述の通り玉堂美術館はお休み中なので、「総合受付」と「朱とんぼ」「櫛かんざし美術館」の3つの拠点の巡回になっています。
本来ならば玉堂美術館・いもうとやの前で行われる予定だった鏡開きや振る舞い酒、限定酒の販売は櫛かんざし美術館で一挙に取り扱われることになりました。
④きき酒専用お猪口
利き酒で使うお猪口です。当日はこれを持っていないとお酒を飲むことができないので紛失注意です。
蔵開き専用。
ちなみにロゴの色は毎年変わりますので、その点も楽しい要素です。以下では過去のお猪口を振り返りつつ、他の酒器も紹介することにしましょう。
澤乃井酒器紹介
きき酒お猪口3年分
澤乃井の存在を知ったのは4年前で、今まで蔵開きには3回参加しています。
左上の青いものがスタンダードな色のようですね。大きさは2勺(32ml)。
ノーマルお猪口と限定お猪口
下段の大きめのお猪口が有料きき酒処で使えるもので、5勺(90ml)。
きき酒処では1杯200円から500円で日本酒を提供していますが、この金額にはお猪口代も含まれています。また、お代わりの時にお猪口をそのまま使えば100円引きになります。
先ほど青色がスタンダードと書きました。そのお隣にある赤いお猪口は特別なんですよ。
青いお猪口を10個と交換できるアイテム。
数年前に通い詰めてようやく手に入れた思い出の赤お猪口。
お代わりの際に新しくお猪口を貰えば10杯で交換できるとはいえ、90ml×10=900mlですからね。5合ですよ。
一回で飲むのは無謀ですし、そうやって集めるものでもないので4,5回通ってもらったんでしたっけ。
青と赤の他にも過去には特別仕様のお猪口が限定配布されていたようで、最近は新元号令和記念で配られたとか。澤乃井ファンとしては欲しいですが、そういうものも巡り合わせですからね。
右下のだるまの木製のお猪口は澤乃井の年始の福袋に入っていたものです。
酒器いろいろ
升とグラスと徳利も追加。
これらはきき酒処で常時販売しており、一つ200円とかその辺りから買えるのでお土産にピッタリです。
ようやく本編、澤乃井蔵開き当日レポート
わんこそば式きき酒(お酒は自分のペースで)
前日に飲み会があったこともあって、朝イチからの参加は難しいと感じていたことから、思い切って昼頃を目指して家を出ました。
イベントに参加したいだとか当日限定酒を手に入れたい、振る舞い酒を飲みたいと考えているならば8時40分の受付開始に乗り込んで色々根回しするのが最善ですが、特にそういった目的がなければ途中参加でもなんら問題はありません。
僕はチケットを購入してからいつも最初に小澤酒造のきき酒から始めるようにしていますし、今回もそうでしたが、昼の時間帯はみんなご飯を食べているのか一切待ち時間なく入場できたので幸運でした。
ま、映えますよね。酒蔵といったらこれといった感じです。
一番乗りでもしない限りカラーコーンに沿って蛇行の行列に並ばなければならないのですが、見ての通りガラガラ。
酒蔵の中に入ると先ほどのリストの順できき酒ポイントが用意されていて、社員さんに注いでもらったものを飲みつつ回ります。
空いているのは結構なことなのですが、待ち時間なしにスイスイ進むということでもあって、普通のペースで飲み続けていくとかなりの急ピッチで1合(180ml)以上の日本酒を飲むことになります(一杯20ml注いでもらえるとして、20×11=220)。
ただでさえハイペース、そして歩きながらなのでアルコールが体に回るのも早いことから考えて、お酒が弱い人にとってはかなり危険なものになります。
もちろんそれを見越して2勺のお猪口といえどもなみなみとは注がないですし、途中で何度か仕込み水を飲むことができる場所が用意されています。
今は順路に沿って各銘柄について1回きりのきき酒になっていますが、以前は飲み放題だったそうです。
飲み放題が廃止された理由は、単にコスト的に苦しいというわけではなく、飲み放題で自分の限界を知らずに飲んだ人が救急車で運ばれたやら酒蔵で暴れたとかで自粛の流れができてしまったかららしいですね。
小澤酒造さんとしては、飲み放題は「気に入った酒はおかわり自由だから好きに飲んでね!」という採算度外視ではじめたことでしょうけど、「その意図を酌めない無粋な人間」というごくごく少数いたことで将来に向かって影響を与えてしまったということになります。
無理に全部飲んで回る必要はないですし、飲めないものを注いでもらうのも失礼なので、ゆっくりゆっくり半分くらい飲むくらいの気持ちで臨むのがいいかもしれないです。
ちなみに僕はもちろん全種類をハイペースで回らせていただきました。
やはり美味しかったのはお気に入りの熟成酒『蔵守』、そして小澤酒造の最高酒『凰』が頭二つくらい抜けて美味しかったですね。
『蔵守』は蜂蜜のようなウイスキーのような濃厚で芳醇な旨味が押し寄せ、一本家に常備しておいたらついつい飲んでしまう美味しさ。
『凰』は舌に馴染むというか、とろけてまとわりつくというか、あまりに自然な飲み口で、これこそ常備したら危険ですね。
まぁ、両方高いからその心配はないのですが。
仕込み水も見ていきましょう。
いつ見ても神秘的です。
全く関係ない話なのですが、「もしも無人島に水と調味料を2つ持ち込めるなら何を選ぶか」という議題について子供の頃から思慮を重ねています。
以前は日本人なら醤油か味噌は必須だろう、と。あとは砂糖か、オールマイティーで何でも使えるめんつゆか・・・。
最近ようやく考えが固まってきて、「水」「塩」「酒」。この3つがベストなのではないかと思うんですよね。
はい、本当に関係ない話でした。
限定酒の前に腹ごしらえ
きき酒を済ませて外に出ると魅力的な掲示物を発見。
時間的に鏡開きは間に合いませんが、「壷祿」には間に合うかもしれない。そして、「竹酒」も非常に気になるところ。
しかしながら、お腹が減っているのもあるのでまずは腹ごしらえといきましょう。
きき酒処に寄って「ひやおろし」をいただきます。この時期にはこれを飲まないと始まらないですからね。
例年に比べて段違いに美味しくなっている気がします。こんなにすきっとしてまろやかだったけ。
そして、澤乃井園の個人的ベストメニューの「湯葉蕎麦」。
どうということはない普通の蕎麦なんですよ。それなのに、それなのに、ここまで体に染み渡るのは一体どんなカラクリなのでしょう。
空腹も後押しして一気食いですよ。
いざ、櫛かんざし美術館へ
お腹も落ち着いたので、橋を渡って櫛かんざし美術館に向かいましょう。
下を流れる多摩川は先日の豪雨で水位が上がり濁り放題。
橋を渡って、ちょっと急坂を登ればそこが櫛かんざし美術館です。
おお、滝のように水が流れてきます。
澤乃井トートバッグチラ見せ。
例年満喫チケットが入っている袋は4合瓶がすっぽり入る縦長の手提げでしたが、今年は更に気合が入っていますね。造りもしっかりしているし。
ちょうど送迎バスが来ていますね。見回してみると、『壷祿』はもう終わってしまったようです。
澤乃井の熟成酒は『蔵守』を見てわかるように美味しいですからね。来年は古酒狙いで早めに来てもいいかもしれません。
ちなみに何年か前の蔵開きの時に飲んだ限定の古酒『亀口酒』を超える古酒にあれ以来出会えていません。
琥珀のような輝きの古酒、またいつか飲みたいな。
櫛かんざし美術館は館内撮影禁止なので、中庭から町の様子を撮影。
前日の大雨が嘘のように晴れ渡って蔵開き日和ですね。やっぱり来てよかったです。
いつもはササッと館内を回って出てくるのですが、ちょっと酔い覚ましの意味も含めて定期的に行われる琴演奏を聴いてきました。
昼間からお酒飲んで、蕎麦食べて、美術館見て回って、琴の音を聞きながら過ごす。何という贅沢な時間なのでしょう。
ちなみに櫛かんざし美術館では満喫チケットの提示でくじ引きができまして、今回はオリジナルマグネットが当たりました。
この世界に櫛をマグネットにするという発想があったことに驚きを隠せません。
前の蔵開きのときに同じくくじを引いて、「団子」が当たりました。小腹が空いているしこれはありがたいと団子屋さんに向かいます。
当たり券を手渡して引き換えてもらったのは何と団子1パック。4本入りだったでしょうか。しっかりしたみたらし団子が4本。
基本的に気前が良すぎるのが澤乃井の蔵開きです。
こちらがお土産に買ってきたアコーディオンカードケース。ふくろう可愛すぎ問題。
思い出の品として大切に使っていこうと思います。
外に出ると14時前。竹酒にはなんとかありつけました。
竹から蛇口が生えているというシュールな光景を見ながら100円を支払い、たっぷりの竹酒をいただきます。
もうすぐバスが来るということで列に並びながら飲む。
日常ではバス停に並びながら日本酒を飲んでいたら浮きますが、ここでは当たり前なのですよ。
飲んでみると鼻から抜ける竹の力強く豊かな香り。少しバナナっぽくもあるかもしれません。
日本酒に香りをつけるというのが風流ですね。貴重なものをありがとうございます。
煉瓦堂朱とんぼで飲んだくれ
しばしバスに揺られて朱とんぼへ。
ここにはオリジナルの酒器を作れるワークショップやお酒の販売スペースがある他、地元のお店が集まって絶品のおつまみを提供しています。
朱とんぼ、満員御礼。飲食スペースは広大ですが、訪れた頃には座る場所はありません。
ライブを楽しむ人、つまみを買いに並ぶ人、顔を赤くして飲んで食べて談笑する人、酔いつぶれていびきをかいている人。
それぞれが楽しんで、思い思いの時間を過ごしています。
先行きの見えない日本の未来に閉塞感を抱きつつ繰り返す毎日を生き抜いているんだもの。たまにはへべれけになってもいいじゃないか。
ここにあるのは自由。日本酒が好きで、澤乃井が好きで、旨いものを食べて飲んで騒ぎたい人の集まり。
日本はまだまだいけますよ。
鮎の塩焼きや焼き鳥も捨てがたかったけれど、一番心を揺り動かされたのはもつ煮。
ずっしりとした重量を感じながら、本日最後の澤乃井ともつ煮を頬張る。最高最高、来年もきっと来よう。
まとめ
毎年1回のお楽しみ、「澤乃井の蔵開き」。日本酒が大好きな人も、そんなに量が飲めない人も、興味があるけど手が出せない人も。等しく迎えてくれる温かさがそこにはあります。
来年の10月末、僕はまたここに来ることでしょう。秋の実りを祝うために。健康で美味しく飲める日本酒と奥多摩の恵みを味わうために。