長いこと東京に住んでいても知らないことは数えきれないほどあり、「いつでも行ける距離だし...」「また今度でいいかな...」と先送りしていると結局何もせずに過ごしてしまうというのは割とあるあるだと思います。
最近はあえて東京の知らないスポットを散策したり、お気に入りの場所を深堀してみたり東京の良さを意識的に探究しているのです。
↑その一例。
そして今回書くのは、東京の各所に存在する十ヶ所の神社を回るという『東京十社めぐり』の様子です。
東京の各所と言ってもそのうち半数以上は密集していますし、昨今の発達した交通網を駆使して一気に回るのもありですが、のんびり散歩しながら訪問することができたらと思っています。
ちなみに時間的に前後していますが、今回の根津神社の前に北区・王子にある王子神社には既に訪問しているので、後日別立てで記事にしていく予定です。
文京区・根津
文化と歴史の街
『根津』で想起することといえば「谷根千」というフレーズだろう。
谷根千は文京区から台東区一帯の「谷中」「根津」「千駄木」の各地区を総称したもので、下町情緒を残しつつ洗練されたカフェや雑貨屋、神社や大学も見られる文化と歴史の土地というイメージ。
左手に進めば目的の根津神社。右手を進めば東京大学。
根津神社
大イチョウと荘厳な鳥居がお出迎え
まずは今回の旅の大目標の根津神社に向かう。見事な大イチョウがお出迎え。
非常に上品で格式高い印象を受ける鳥居だ。
まだ12月に入ったばかりなので、七五三のお参りに訪れたであろう家族連れが多い。
見事なイチョウや紅葉をスケッチブックに描いているご年配のグループもいらっしゃった。絵画サークルだろうか。皆、思い思いの時間を過ごし、穏やかな表情をしている。
駅から若干離れているのもあって、休日にもかかわらずあまり混み込みしていないため、ゆっくり回ることができそうだ。
本殿
楼門付近はちょうどカメラマンの方が撮影中だったので、先に根津神社本殿の方から。
一言で言い表すならば「威風堂々」。この場所に存在するのが運命づけられていて、何事にも動ぜずどっしりと構える力強さと潔さを感じる。
少し並んで二拝二礼一拝。この旅がよいものになる予感がする。
乙女稲荷神社
左手に進むと乙女稲荷神社。千本鳥居が目に飛び込んでくる。
せっかくなので千本鳥居を歩いてみようか。
道幅は狭く、人ひとり歩くのがちょうどいいくらい。反対方向から歩いてくる人が見えたら譲り合って進んでいこう。
駒込稲荷神社
長い千本鳥居を抜けると、その先には駒込稲荷神社があった。
ここまで歩ききってくる人は少ないようで、お狐様を独り占め。
お賽銭お賽銭・・・。ん?
賽銭箱の上に稲荷寿司が置いてある。よく見ると、製造年月日は当日で今朝買ってきたばかりのものだ。
しかも本殿側に向けて配置されている。狐にとっても嬉しいことだけど、これを見つけた僕も嬉しくなった。どこの誰だかわからないけれど、あなたに幸せが訪れることをお祈りしています。
「その稲荷寿司はわしの昼ご飯だコン」
お、お前、顔が・・・。
永年風雨にさらされていると狐のトレードマークの長い口の方から風化してしまうもんな。
前掛けは定期的に交換されているようでピカピカの新品だ。こういう風に愛されているのを見るとまたここに来ようと自然に思える。
境内を改めて散策
久しぶりに良く晴れて、木々も気持ちよさそうだ。
赤、青、黄の3色がよく映える。
撮影も終わって落ち着いたころに唐門に戻ってきた。さて、ひと通り境内を散策できたので、最後に御朱印を賜ることにしよう。
帰りに見たイチョウはやはり見事だった。
今回の旅の大目標・根津神社の御朱印
根津神社のイメージ通り、雄々しく力強い御朱印だ。
ちなみに十社めぐりの専用の御朱印帳は世にも珍しい木製。年月を重ねると味が出てくるだろう。
素敵な雑貨屋さんに寄り道
根津神社の入り口にある雑貨屋さんで衝動買い。
右上はココナッツでできた擂鉢だ。軽くて頑丈。将来本格的なカレーを作るときにこれでスパイスを調合しよう。
もう一つは益子焼の皿。店員さん曰く、以前某レストランの卸していた業務用のものらしい。一般には流通しておらず、現在新規の供給はされていないレアもの。
昼ご飯を探しつつ千駄木方面へ
さて、お腹も空いてきたので昼食を食べられるところを探そう。
左方向に「夏目漱石旧居跡」・・・。無視するわけにはいかないので、そちらの方向で見つけることにしよう。
なんとも味のあるカフェ。気にはなるけど今はご飯が食べたい。
メインストリートから一本中に入って住宅街の方に進んでいくと、見えてきた夏目漱石旧居跡。
漱石がイギリスに留学し、ビスケットをよく食べていたというのは有名な話だ。
以前、嵐山光三郎さんの『文人悪食』という本で「英国料理が不味いというイメージは『漱石日記』で彼が英国の料理に馴染めずビスケットや砂糖をまぶしたピーナッツばかり齧っているという文章に影響されたのかもしれない」と前置きしたうえで、「胃弱の漱石と英国の田舎料理は親和性があるのではないか(素朴な味が和食に通じるのではないか)」と書いていた。
帰国してからもビスケットをかじり続け、死ぬ間際に赤ワインを欲したという一幕からも漱石が心から英国料理を忌み嫌っていたわけではないと思うし、彼にとって英国留学が心底辛いものだったかは今となっては確かめようがないが、僕は嵐山さんの説を信じたい。
高校生のときに夏目漱石の作品はいくつか読み漁ったけれど、彼の偉大なる作品の一部に過ぎず、いつか全作品に目を通したいと思う。
近くのアパートの有刺鉄線にはカラスウリが成っていた。
この繁茂の仕方を見るに自生したわけではなさそうだ。つる性植物を壁状に生育させて日光を遮る「緑のカーテン」というものがあるけれど、それっぽいかな。
ふらっと歩いていつの間にか千駄木に踏み込んでいたらしい。
まとめ
久々の快晴に恵まれ、何の気なしに出かけてきたけれど、きれいな景色と洗練された文化の空気に触れ充実した休日の昼下がりが形作られていく。改めて歩くことで知らなかった東京が開けていく。これが散歩の醍醐味だ。
まだまだ谷根千散策は始まったばかり。後半はご飯を食べてから千駄木、湯島方面に向かうことにしよう。