茹だるような夏の暑さは鳴りを潜めて、ようやく落ち着いた秋を迎えられそうです。
個人的にもひとつ大きな仕事を終えることができたので、読書、ゲーム、散歩、食欲の秋を楽しんでいこうと思います。
さて、毎度のことながらブログの更新が亀の歩みになっております。今回もリハビリがてら、ちょっといつもとテイストを変えた記事を書いていきますので、お時間ある方は是非お付き合いください。
酸いも甘いもサマーキャンプ
引っ込み思案な僕だけど
夏の終わりに思い出す。子供の頃の夏の出来事。
小学校5年生の時に参加したサマーキャンプについて話そう。
このサマーキャンプは夏休みの3日間を使って行われる。
僕が通っている小学校の行事というわけではなくて、周辺他市の小学4年生~6年生の希望者を対象にしたものだ。
「黒板の横の机にプリントを置いておくので、気になる人は参加してみてくださいね。参加するときはお父さんとお母さんの同意が必要ですからね~」
と、当時の僕のクラスを担当していた、いかにも頭の固そうな女性の先生が帰りのホームルームの最後に付け足すように案内をした。
ふーん。そんなのあるんだ。去年もあったのかな。覚えてないや。
僕は面倒事が嫌いだ。
ゲームのレベル上げは好きだけど、夏休みの自由研究を大作に仕上げるなんて御免だし、何故か登校日に開かれる水泳大会で本気で泳ぐなんてだるすぎる。
3日間・・・。
夏の盛りなのに、クーラーも扇風機も多分ない。どうせ夕食はカレーだろう。しかもありがちな謎に薄くてスープっぽいカレー。ご飯はきっとボソボソかネチャネチャだろう。
テントの中に虫が入ってきたら嫌だな。そもそも僕は人見知りだし、知らない子と共同生活とか無理無理。
でも、面白そうだな。
魔が差した、と言っていい。面倒くさがりの僕の小さな冒険。
この夏は確かにちょっとだけ刺激的な夏になったんだ。
ホームルームが終わり、みんな、蜘蛛の子を散らしたように帰っていく。
僕は黒板の横の机の上のプリントを凝視。日程は7月28日から30日。参加費は2,000円。集合はW駅に朝8時。参加者は40人ほどを見込んでいるらしい。
1班3人構成で、基本的には3日間の大半を共に過ごすことになり、夕食の時は3班合同で調理・食事をするとのこと。
「オレもそれ行ってみようかな・・・」
友達のTだ。Tも割と引っ込み思案なところがあって、こういったイベントごとに積極的なイメージはあまりない。半年ほど前から習い事で空手を始めたらしく、少しだけ男らしくなった気もする。
「どうせうちは旅行とかしないからさ」
僕は自嘲気味に笑う。母親は昔から乗り物酔いがひどく、家族で遠出した記憶はほとんどない。
夏休み前、家族で旅行に行くという話で周囲が盛り上がっている中、なんとも肩身が狭い思いをしながら、旅行なんて面倒だよなと自分を納得させていた。
「一緒に参加してみようか」「うん」
決まりだった。
そういうのに行きたいって言うの珍しいじゃない、いいよ行ってきなさい。その日のうちに両親の同意を得て、僕は小さな夏のイベントに胸を膨らませていた。
サマーキャンプの掟
後日サマーキャンプの実施団体から、キャンプのスケジュールと注意事項一覧が送付されてきた。
1日目は8時にW駅に集合した後、キャンプ場に移動。オリエンテーションの後に班分け、各自顔合わせをしたらテントを組み立てる。休憩後、渓流に移動し川遊び+釣り。
13時から昼食。午後は山登り。17時から夕食準備+食事。後片付けが終わり次第、花火大会、キャンプファイアー、自由時間。10時消灯とのこと。
めちゃくちゃ面白そうじゃないか。
そうそう、2日目のスケジュールは後程話そう。
注意事項も見ておこう。
・キャンプに必要な器具は全て用意してあるので、手ぶらで持参しても大丈夫
・3日間の行程が終わるまでが共同生活なので、途中で離脱は基本的に無しで
・体調不良等の事情があれば対応します
・無理をしてけがをしないように楽しみましょう
・お子さんに持たせるお金は往復の交通費のみにしてください
・自活を目的にするイベントなので、不要と思われるものは開始時に回収します
最後の2つは気になるところではあるけれど、僕の目にはキラキラのキャンプスケジュールしか見えてないからね。仕方ないね。
お、「自分だけの食器を作ろう」?
事前に粘土で皿を作っておいて、キャンプ時に石窯でそれを焼いて仕上げるそうだ。そんな体験までできてしまうのか。最高だな。
キャンプの日の1週間前までに、T市にある市民会館の一室に用意されている部屋で作業してほしいとのことだった。
そうかそうか、これが事前交流ってやつか。和気あいあいと粘土細工するのも楽しそうだな。でも、初めて会う人と話すのは緊張するな・・・。
粘土のお姉さん
数日後、市民会館の指定された部屋に向かう。
平成〇〇年サマーキャンプ参加者様
おお、ここだ。どんな面子が揃ってるかなー・・・
誰もいない。
一抹の不安を覚えた僕は、そもそも人の気配があまり感じられない市民会館の中を散策してみることにした。
土曜日の午前中なのにこんなにガラガラなのか。
いや、誰もいないわけじゃない。一階の奥の部屋でおじいさんが2人で囲碁をしていた。
2階では職員らしき20代後半と思われる女性が段ボールの整理をしていた。
「あのー、すみません。サマーキャンプの案内を見てきたんですけど、誰もいなくて・・・」
その女性は驚いたような、そして話し相手が見つかって嬉しいような表情で僕を案内してくれた。
「はい!それでは今から粘土でお皿を作ってもらいます!まずは自由に思った通りにお皿の形を作ってみましょう。お茶碗でもいいですよ。」
お茶碗でもいいんか。
目の前に用意された粘土をこね、丸く整えてから中心を窪ませて、徐々に薄くしていく。
「上手にできてますね~。左の手のひらに粘土を載せて、右手で回しながら上の方を薄くするイメージで伸ばしていきましょう。あ、ちなみに伸ばしてる場所は『腰』って言います」
このお姉さん、やたら詳しいな。何者なんだよ。
ある程度形になってきたが、腰の部分を薄くし過ぎたのと水を多用しすぎたのもあって、粘土がへたってきてしまった。
「大丈夫大丈夫。ここから持ち直す方法はあるから!でも、せっかくならここからお皿にしてみましょうか」
お姉さんの指導で茶碗はお皿になった。
「うん、完成。今作ったのは、いわゆる『手びねり』っていう作り方です。まだ時間は大丈夫ですか?よかったら、タタラ作りでお皿を作ってみませんか?」
タタラ作り?いや、このお姉さんは陶芸家なの?
先ほどの失敗を活かして、タタラ作りでは一人で(自称)見事な皿を作り上げることができた。
「一人2つまで仕上げの行程に持って行けるので、この2枚を出しちゃってもいいかな?」
はい!お願いします!僕は陶芸の道に一歩足を踏み入れたと満足感でいっぱいになりながら市民会館を後にした。
まとめ
もうずいぶん昔の記憶になりますが、当時のことを鮮明に覚えているので、やはり自分の中の特別な思い出の一つなのでしょうね。
続きを書くのが自分でも楽しみですが、気が向いたらお付き合いください。