久しぶりの刹那的放浪記シリーズ。
いつもならば、場所を直感で決めて食事もルートも全くのノープランで着のみ着のままで散策するところですが、今回の旅の拠点『神奈川県横浜市金沢区金沢八景』は以前少しだけ散策したことがあって、ふとあの地を深掘りしたいという欲求に駆られて実現した放浪。
そういった意味では少し毛色の違う放浪になります。
刹那的放浪は突然に
前日決まる目的地:金沢八景
放浪の旅はいつも思いつき。何日も前から思案して行く場所は期待が大きすぎて肩透かしを食らった時のダメージが大きい。「ちょっとラーメン食べてくるわ」のノリがいいのです。
今回の目的地、金沢八景に行くことを決めたのも前日でした。
京急線に揺られること数十分。
この日は平日ということで車内ガラガラを想定していましたが、そこそこの混み様でした。この辺は大学とか多いようですし、普段から割と活気があるのかもしれません。
江戸時代に中国から渡来した東皐心越(とうこうしんえつ)禅師が金沢の地を訪れた際、能見堂からの眺望の美しさを彼の故郷である中国湖南省の瀟湘八景になぞらえて八篇の詩を詠んだ。
- 「洲崎晴嵐(すさきのせいらん)」
- 「瀬戸秋月(せとのしゅうげつ)」
- 「小泉夜雨(こずみのやう)」
- 「乙舳帰帆(おっとものきはん)」
- 「称名晩鐘(しょうみょうのばんしょう)」
- 「平潟落雁(ひらかたのらくがん)」
- 「野島夕照(のじまのせきしょう)」
- 「内川暮雪(うちかわのぼせつ)」。
これが金沢八景のはじまりだと言われています。
そして、この金沢八景を題材に、東海道五十三次で有名な歌川広重が8つの大判錦絵を制作したのですね。
駅前は広々。京急線と八景島シーパラダイス方面をつなぐシーサイドラインが通っています。
電車内はそこそこ込み合っていましたが、さすがに平日の10時頃なので、人影はまばら。
右手は住宅街っぽい雰囲気、左手は以前散策した瀬戸神社がある方向(横浜銀行が見えますね)。今回は海が見えるまっすぐ前方に進んでみましょう。
野島公園へ続く道
ここに来てよかった、一瞬にして確信に変わるブルースカイ、ブルーシー。
正式名称は知らないけれど、南国っぽい場所に植えられているヤシの木風の巨木。
実がついてる・・・。梅っぽい。
たくさん落ちとる。
・・・。
まっすぐな道をグングン進んでいくと、八景橋を発見。
この道はシーサイドラインに沿っていて、線路下が日陰になっています。その場所は雨がしのげて適切なのか、やたらとキャンバスに風景を描きつけている方が多いこと。
いや、これは確かに描きたくなる風景。線路のカーブがいいね。
公園の遊具がクジラ。こういう遊び心は大切だと思う。
日差しは少し強めだけど、吹き抜ける風が心地いい。
足元でジョボジョボ音がしていたので覗き込んでみると稚魚の大群。ボラですかね。
十字路に差し掛かったところで、なんだかいい感じの橋が見えます。
神奈川の橋100選に入っているようです。本当にいい感じの橋だった。夕照橋のネーミングも風流ですね。
橋を渡りきると、瀕死の横断歩道。ちょっと坂になっているし、タイヤの摩擦でこうなるよね。
いいねー、ゆっくり泊りがけで釣りというのも乙だね。
海と住宅の中間あたりを進んでいくと、野島公園に当たる。バーベキュー場があるようなので、週末は賑わうんでしょうね。
しかし、今は平日の午前中。誰もいないグラウンドは胸にチクリと刺すものを感じる。
誰もいない公園。
少し歩くと、ベンチに座ってのんびりされている方を見かけます。これだけ自然豊かで静かな場所ならリフレッシュできそう。
空に落ちる感覚
上に続く階段。先ほど見えた「展望台」の文字・・・。
これは登るしかあるまい。
この辺でちょっと後悔。
Q.一体何段あるんだ。
A.239段。
この木漏れ日はご褒美。
やはり高いところに登ると見える景色が違います。
より涼しく、よりさわやかな風が体を包む。しばらく放心。
空に落ちる感覚。
さて、本丸の展望台からの眺望はどうでしょう。
あれは八景島シーパラダイスですね。
街中を散策するのもいいですが、自然がやや勝っているような環境の方が散策しがいがあります。
伊藤博文の別宅へ
この坂を下りていくと、伊藤博文の別宅に着くらしい。せっかくなので、そちらも寄ってみよう。
みなさん、こちらは坂です。
繰り返します。こちらは坂です。
多分こちらのルートから来た方が楽です。
松の木と海の組み合わせの妙。
これが伊藤博文の別荘?結構入り口が地味ですね。
彼岸花は不気味がられることが多いけど、息を呑む美しさがあると思うんだ。
ここがbe、いやさすがに倉庫か。
伊藤博文がどんな頻度でこの別荘を利用していたかはわからないけど、海を見てぼーっと過ごす時間は何物にも代えがたいと思う。
そうそう、こっちだよね。本体。
ご立派。入館料は無料。
地方にこういう旅館ありそう。
あれですよ、竹の節を抜いたやつでフーフー息を吹き込むやつ。
中庭という用途のない空間を作り、愛でる日本の心。
他に観覧者がいないので、じっくり思考を巡らせながら楽しむ。
教科書でよく見る伊藤博文像ですね。
お風呂ちょっと狭くないですか。
ヒロくんの家を出て、また海沿いの道。ススキ、もう秋か。
約束されし勝利のランチ
昔ながらの釣具屋さんや漁船を右手に見ながら進むと、「野島運河」と銘打たれた素敵な橋にぶつかる。
橋の先をずっとまっすぐ住宅街を抜けていく。
実は下調べしていたランチ候補のお店。せっかく海の近くに来たからには、海鮮食べたいじゃないですか。
現在時刻は11時20分。開店が11時30分なので、少し辺りを歩いてみよう。
町屋神社。お賽銭箱がなかったので、参拝だけ。
気合の入った看板に、初めて見る「さつまラーメン」の文字。世界を目指すときたか。
事前にランチを決め打ちしていなかったらこの吸引力にやられていたかもしれない。
営業中だし。醤油ラーメン、味噌ラーメンのカテゴリーには属さなそうなさつまラーメン。一体何者なんだ。
私は、戻って、きた。
注文するのは菊1.5。シャリ大盛は結構珍しい気がする。
無事注文できたわけだけど、11時33分頃入店してみると、店内は既に7割の入り。
入り口で「ご予約の方は・・・?」と聞かれたときは一瞬ダメかと思いましたが、一人ということでなんとかカウンターに通してもらえました。
基本的には予約しないとは入れないという認識でいいかもしれません。開店直後からテイクアウトの予約の電話がひっきなしにかかってきていましたし、地元の人気店なのかもしれません。これは期待。
まず、きのこのあんかけがかかった茶わん蒸しが旨い。寿司を食べる前の胃の受け入れ態勢を盤石にして食欲増進させてくれるような優しい出汁。中の具もしっかりしていて手抜きなし。
そして来ました、寿司。
左上から、中トロ、赤身、赤身漬け、ブリ、アジ、真鯛の湯引き、太刀魚の炙り、玉子、蒸しエビ、いくら、かんぴょう巻き、鉄火巻き。そして、
別皿で来る出来立てのアナゴ。近くにある柴漁港はアナゴの水揚げで有名だそうで。後で行ってみたい。
ランチの寿司は、言い方は悪いですが、ディナーで出すものとは全く別物というか、明らかにネタの質に差がある(ありそう)なものが多い印象です。
しかし、こちらのネタはすべて本気というか、手抜きを一切感じさせない印象を受けます。人気が出るのも頷けますね。
シジミの味噌汁。見事に〆。
漁港近くのパン屋に向かって
ベーグルクリーンヒットを狙って
自身のランチ選球眼に誇らしさを感じながら、柴漁港に向かいましょう。実はそこにも下調べしていたパン屋さんがあるのです。
ちなみにこちらの神社もお賽銭箱なし。金沢トレンドか。
神社の横の通りにベーグル屋さん。もちもちのベーグル美味しいですよね。
ベーグルはどこのものでも一定の満足感を得られますが、「ここのベーグルが一番!」という店にはなかなか出会えていない現状。差別化が難しい食べ物なのでしょうか。
ベーグルと、ついでにマフィンを購入。何を買ったかは最後のお楽しみにしましょう。
金沢八景の一角、称名寺
異世界感満載の入り口
これは冒頭の金沢八景の一つ「称名晩鐘」、称名寺の入り口ですね。
この門から続く並木道というのがなんとも幻想的で別世界に来た錯覚に陥ります。
とりあえず写真に撮って、後で読むやつ。
やっぱりいいですねー、並木道。
立派な門とご対面。門をまっすぐ突き抜けることはできないようになっていますが、左手の入り口から中に入ることができます。
ぼくのなつやすみ
田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに来たみたいだ。自然豊かでわくわくする。
今の季節はちょうど花の切れ目なんだと思いますが、春は菖蒲、夏は紫陽花、秋は紅葉に銀杏が色めいてさぞかし幻想的なことでしょう。この青々と茂った感じも嫌いじゃないですけどね。
どこかに連れていかれそう。
左見て
右見て
本堂
にゃーん。
伸びてるの可愛すぎ。
ここの飼い猫なのか、それとも長く住み着いているのか、人間に対する警戒心はゼロ。ちょっと汗ばむくらいの陽気だけど、気持ちよさそうにごろごろしておりました。
帰りがけ、寺務所で御朱印をいただきました。
柴漁港とパンと海
さて、ここがもう一つ目をつけていたブレーメンという名のパン屋さん。漁港の目の前にあって、アジフライパンや太刀魚パンなど珍しいパンがあるそうで。
いくつか見繕って買いましたので、これも最後にご紹介することにしましょう。
遠くに見えるは、
柴漁港。日曜日は一般向けに魚の直売を行っているようです。
漁港独特の香りがします。個人的には醤油。しょっつるとかそっち方面の香りですね。
本当に今日はいい天気だ。
海の公園にも寄っていきましょう。
誰もいないグラウンド。
砂浜に進出。想像以上に砂が熱かった。
このときは人影が見えないですが、周辺をぶらぶらして数分後に戻ってきたころには家族連れで海に遊びに来た方が何組か。大きい道路から横にそれれば海の公園なので、来やすいんでしょうね。
あんパンと海。ヘミングウェイ的なやつ。
まだまだ日も高いけれど、存分に楽しめたのでそろそろ帰りましょうか。ここから金沢八景、もしくは金沢文庫まではそれなりの距離があるので、シーサイドラインで楽しちゃいましょう。
お土産をたくさん抱えて
金沢八景駅に戻ってきて、最後にダメ押しの甘味土産を。すぐ下で紹介します。
ブレーメンのカレーパン、アジフライパン、ナポリタンパン、八景あんぱん(こしあん)。
オーヴンのクランベリーベーグル、アールグレイとオレンジピールのベーグル、マロンマフィン。
風月堂のあんみつ、白玉、晩鐘最中(小豆餡、柚子餡)。
この記事を書いている時点ではパンとマフィンしか食べていないですが、どれも素朴でありながら愛情と実力に裏打ちされた温かい味でした。他のものも食べるのが楽しみです。
まとめ
いくらおいしい料理を出す店だとしても、そこに何度も足しげく通うというのは相当なレアケースだと思います。いくらでも選択肢があって、既存のものの機会を重ねるよりも新規開拓した方が感動の度合いが大きくなるから。失望も多いけれど。
旅先も同じで、何度も同じ場所に行って深掘りしていくほどの熱意は湧きにくいものです。しかしながら、今回ふと「また行ってみたいな」という直感から再訪した金沢八景は以前にも増して素晴らしい場所でした。
最近は流行り病で大手を振って散策するのが憚られる時世ですが、節度を守って新しい場所、そして深掘りによる新たな魅力の発掘に努めていきたいと思います。