うたかたラジオ

お代は“ラヴ”で結構です。

近すぎず、遠すぎず。美容室でのコミュニケーションについて僕が思うこと。

髪を切るときには、そこが理容室であれ美容室であれ、何らかのコミュニケーションが発生するじゃないですか。

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「お仕事は何されているんですか?」「今日はお休みですか?」「この後どこかにお出かけされるんですか?」等々。

お客さんを退屈させないように間を開けずに会話の流れを作るプロの技なのですが、個人的にそういう会話苦手です。

苦手、というか何も考えずに約一時間過ごせる貴重な機会で、リラックスするために髪を切りに行っている部分があるので、絶え間なく話しかけれると疲れてしまうんですよね。

これに関連してつい最近あった出来事を書いていこうと思いますよ。

 

 

風来の根無し草

場所を固定したいという希望

僕はひとつの美容室に通い続けるということが稀で、基本的にはあっちに行ってみたりこっちに行ってみたりする。

もちろん仕上がりは不安定であるし、ひとつの美容室に固定できたらどんなに楽かと思う。

腕がいいのは選定の基準になるが、これと同程度に重要なのは上に書いたような居心地の良さだ。

適度に話すくらいならいいが、会話を常に成り立たせようとすると疲れてしまう。

なかなかこの二つの基準を満たす美容室が見つからないので、いつも根無し草なのだ。

しかし、ここ最近、1年半くらいだろうか。通い続けている美容室がある。

特に美容師さんを指名したりはしないので、時々おしゃべりな人に当たることもあるが、そこを除けば割と自分好みの時間が過ごせるのが気に入っている。そのおしゃべりな人を仮に「アフロ」とする。

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生産性のない会話

このアフロが目の上のたんこぶというか、僕が苦手な人種なのである。

話す内容がペラペラだ。それでもプロ根性で話を続けてくる。その非生産的な会話には毎回辟易していた。アフロは僕に興味がなく、僕もアフロに興味がない。このlose-loseの関係が非常にストレスであるため、僕は一つの決断をした。

閃き

アフロ以外の美容師さんを毎回指名する。しかも固定化してしまおうではないか。

なぜ、こんなに簡単な解決策を今まで取らなかったのか。その答えはもっと簡単だ。

 

し、指名とか恥ずかしくてしたことないし・・・///

 

こうして僕はアフロ除けを実現できたのだ。グッバイアフロ、達者で暮らせよ。

一番居心地のよかった美容師のMさんを指名した。なんという安定感。なんというアルカディア。必要以上にこちらに踏み込んでくることはない。髪を切りに行くのはいつも面倒で、できれば避けたいイベントであったのだが、少なくともここ最近は髪を切ることに何の抵抗もなくなっていた。

僕の最近の一押し作家の太田和彦氏が作中でよく話題に出している、『客と店主の間にはカウンターという一枚の板が存在しているからこそいい。近すぎず、遠すぎない距離』なのだ。

これは店側のみが配慮すればいいという問題でもなく、客側も「自分は馴染みなんだから特別扱いしろ」だとか「サービスしてもらって当然だ」というような勘違いをせずに、親しき中にも礼儀あり。

あくまで店と客はお金を媒介にしているのだから、その対価を十分に果たせばそれ以上を求めるべきではない。居酒屋のみならず、サービス業全般に言えることではなかろうか。

超・居酒屋入門 (新潮文庫)

超・居酒屋入門 (新潮文庫)

 

 ↑今後のブログで太田和彦氏と東海林さだお氏の書籍の紹介はヘビーローテーションで出てくると思う。

理想郷は儚い

さて、話を戻すと、つい先日髪を切ってきたのだ。もちろんMさんにだ。

いつもより若干踏み込んでくる。僕の髪質の特徴や、伸びやすい部位、カットの仕方やMさんが心掛ける点等々。その中で「今年は実家に帰省されるんですか?」という質問があったが、特にその予定もなかったため、「今のところ、その予定はないですねー」という感じで一旦会話が途切れた。

最後にドライヤーで乾かして、微調整の鋏を入れながら、

「〇〇さん、遅くなってしまってすみません。僕、実家のある××(東海地方の某県)で実家の美容室を継ぐことになったんです。だからこのお店にいられるのは9月までなんです。〇〇さんのカルテはしっかり残しますので・・・」

本当は帰省の話のところで言うつもりだったのだろう。申し訳なかった。うーん、あなたがいないとこの美容室に通い続ける理由がないんだけどなぁ。いやいや、せっかくカルテを残してくれるというのだから、しばらくは通ってみようか。

 

ありがとうMさん。あなたの腕と居心地の良さは一流だよ。