良い文章とは、完読される文章である。
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング (できるビジネス)
- 作者: 唐木元
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2015/08/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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上掲の書籍において繰り返し説かれている言葉です。
どんなに内容が素晴らしかったり、熱意を持って書かれていようとも、完読してもらわなければ意味がない。
最後まで読み通すことによって、筆者の伝えようとしたことを余すことなく読者に手渡すことができるのだから、自身の文章力に悩む初心者がまず目指すべきは、『完読される文章』であるとしています。
普段はあまりハウツー本を読まない自分ですが、日々文章力のなさや語彙の貧困さには悩んでいるところですし、7月半ばから『はてなブログ』でブログを書かせてもらっていることもあり、重い腰をあげてみました。
完読される文章
本書で紹介されているのは、文章作成のごく基本的なルール(お作法)である。
前にブログでも取り上げたが、文章に0点も100点も理論上は存在し得ないので、このルールは大衆が読む文章として及第点といえるラインを指している。
芸術的で含蓄のある文章を書くということではなく、あくまで読者目線に立った読みやすい文章、とっつきやすい文章を書くことに主眼を置いている。これがいわゆる『完読される文章』である。
ひとつひとつ染み込むような指南
全4章構成のうちの第1章で触れられているのが、文章を書き始めるにあたっての下準備についてだ。
文章の中で伝えたい軸になるもの『主眼=テーマ』を設定し、これを論証していくための『骨子』を組み立てることが大切である。
勢いに任せて行き当たりばったりに文章を書き進めるのではなく、文章の構造をあらかじめざっくりと決めておき、そこに肉付けをしていくのだ。
著者に言わせれば、文章は事前に用意しておいたパーツを組み合わせて作るプラモデルのようなものだという。
いきなりではあるが、僕は文章の構造を事前に把握することが苦手である。
とりあえず書き始めてみて、荒くアウトラインを描いてみる。そこから不要な部分は削り、足らない部分は足すという推敲作業に入る。
当初のアウトラインがざっくりしたものであるため、この推敲作業に時間がかかる。
イメージとしては、丸太からガンダムを削り出そうとしているようなものだ。荒く荒く作ったものを少しずつ削ったり、厚みをつけるべきところは追加でパテ埋めする。
以前テレビで見た仏像職人の方の言葉に『我々は一本の木材から仏様を掘り出すんです。これ以上掘ったら仏様の顔から血が出てしまうんじゃないかというくらい慎重に、ギリギリまで刃を進めます』というものがあった。
当時の僕は痛く感動し、今でも鮮烈に覚えている。
もちろん僕の書く文章はこんなに高尚でもなく尊くもないが、全くの更地から手一本でものを作り出して取り上げるのが楽しい。出来上がった瞬間の喜びが忘れられないから、僕は文章を書く。
ただ、このやり方は書き出される文章の出来不出来の幅が大きく、毎回一定のクオリティを保つというのが難しい。
また、推敲に多大な時間がかかるため、調子のあまり良くない日は訂正箇所も比例して増え、負担が大きい。
それすらも味わい深いと思えればいいが、あくまで『人に読んでもらう文章』なので、時に会心の出来があるよりも毎回粒揃いの文章を用意できた方が安心して購読してもらえるだろう。
そういった意味でも今までの方法を見つめなおして、文章のパーツ作りを意識していきたいと思う。まぁ、この文章もいつもの行き当たりばったりパターンなのだけれど。
第2章及び第3章では、作成した文章のブラッシュアップを取り上げている。
推敲大好き人間としては、これらの章を読み進めるのが楽しくてならなかったし、悩んでいた言葉の使い方についても解答の指針を得ることができたため、非常に実りあるものになった。
単語、文節、文型、段落単位の重複がないか。
文末のバリエーションが乏しくないか。
主語と述語は対応しているか、距離がありすぎないか。
漢字とかなのバランスはいいか。
「が」や「で」で長々と文をつないでいないか等々。
どれも言われてみれば当然のことではあるのだけれど、
【例】
✖️記者会見である重大な発表が行われる予定だ。
○記者会見で、ある重大な発表が行われる予定だ。
上の文章は読みにくいことに加え、本来伝えようとした意図とは異なる解釈をされる恐れがある。視覚的にも適切な区切りが必要。
【例】
△記事を書いて配信する事は製造業の一種です。
○記事を書いて配信することは製造業の一種です。
本来の意味から離れた漢字をかなに直す必要性。
上は間違いではないけれど、一般的な感覚では下の方がスムーズで堅苦しくない印象を受ける。「もの」や「こと」についても同様のことが言える。
というように具体例を提示し、よりベターな文章に導く丁寧さがある。
どれも基本的な内容であるが、基本を徹底的に守っていけば格段に読みやすい文章が出来上がる。まさに目から鱗であった。
他にも安易に使いがちである『〜的』『〜性』も内容をぐらつかせ、言葉を流す逃げの言葉であると指摘されている。乱用は毒である。
確かに使いやすいのだ。それでいて文章がもっともらしく見える。まさに悪魔の言葉。
また、簡単に「こと」や「もの」で言葉を受けてしまい、より適切でスマートな受け皿を探すのを諦めてしまうというのもよくわかる。
書き始めるとキリがないくらいに気づかされることばかりである。手元に置いて何度も読み返したい教科書といえる。
今後も腰を落ち着けてライティングの本を読み漁りたいと思えるきっかけになった。