8月某日、気温36℃、天候快晴。灼熱の中で洗濯物を干した後に、こう思ったのです。
今日の昼は、蕎麦か寿司にしよう!しかも大量に食べたいな。デカ盛りがいい!
近所でサクッと食べてもいいのだけれど、せっかく土曜の昼食にするのだから、暑さを堪えて遠出してみよう。どうせ電車の中は涼しいのだから。いつもの思いつきです。
自分の直感に任せて、頭に浮かんで来た地名は、
三鷹
メジャーどころではあるけれど、知らないことが多い場所です。確かジブリ美術館や国立天文台があったりしますよね。
お腹も空いているので、とりあえず三鷹に決定しました。
それではデカ盛りを探してみましょう。
「蕎麦 デカ盛り 三鷹」
おお、なかなかいい感じ。夜は蕎麦を出す居酒屋さんみたいですね。
「寿司 デカ盛り 三鷹」
『わかさ鮨』・・・!こちらを選ぶ以外の選択肢がないような気がします。
江戸時代の寿司は現代の二、三倍の大きさだったらしいですが、完全にその再現。今日の昼食は寿司にしましょう。
いざ三鷹へ
目的ある旅と目的なき放浪
電車に揺られ、三鷹に向かう。ちなみに今回は目的地がはっきりしているので、『刹那的放浪』ではないことに注意を要する。言うなれば、『ただのお出かけ』である。
ちなみに寿司を食べた後は三鷹を散策するつもりだが、この猛暑なので、『お寿司食べたから帰るのダァ。クーラーの効いたお部屋で世界樹やるのダァ』も十分にあり得ることもまた同じく要注意である。
暑さにより思考の低下は加速する
そうこうしているうちに三鷹に着く。太陽がジリジリと肌を灼きつける。
先ほど調べた店の情報によれば、三鷹駅南口から徒歩17分だそうだ。バスも近くまで通っているようだが、あえて暑い中出て来たのだから、とことん苦労しようではないか。
駅からの道のりは、ほぼ一本道と言っていい。スマホのナビを見ながらでもいいが、今回は夏の暑さとGPS起動によりスマホがオーバーヒートしそうなので止めておく。
駅から5分ほど歩いたところである。恨めしいほどの快晴。
歩行者、皆無。この光景、光が丘でも見たな。もしかして、『地球光が丘化計画』が水面下で進められているのかもしれない。
肌を刺す太陽光。暑くて痛い。日焼け止めは塗って来た。
しかし、これも美味しい寿司を食べるため。この一歩一歩がシャリの一粒一粒だと思って頑張ろう。
さらに数分歩くと、回転寿司の『銚子丸』が見えてくる。お目当ての『わかさ鮨』まであと10分ほど歩かねばならない。
人通りがさらに少なくなる。本来であれば、知らない土地の脇道に入って冒険したいところだが、今は一刻も早く涼しいところに行きたい。
公園マイスター(夏)
もう少し、もう少しのはず。
公園が見えてくる。木々が整えられ、色とりどりの花が咲いている良い公園だ。
僕はその筋では「公園マイスター6段」であることで有名なので、じっくり観察したいところだが、すまぬ。すまぬのだ。先を急ぐのだ。
『下連雀つぼみ児童遊園』か。覚えておくぞ、その名前。
また数分歩くと、素敵な公園が右手に見える。公園は遊ぶ場所であると同時に憩いの場であることが必要である。
このベンチの配置は理想的だ。
ベンチ間に適度な距離が保たれ、限りあるスペースを有効活用している。その結果、十分な休憩スペースを確保しながらも、遊園スペースを最大限に捻出することに成功している。
夏の間はプールになるのだろうか。今日のような猛暑日でも涼しげに見えるではないか。果てしなく有能である。
中央のシンボルツリーも粋である。『あのでっかい木の下に集合な!』、そんな子供達の声が聞こえて来そうである。
市民に寄り添い、子供たちの成長を見守る優しさが滲み出ているではないか。
お名前をお伺いしてよろしいか?『下連雀しらかば児童公園』、覚えておこう。
ここを右。そして豆腐屋を左。
桃源郷は確かにあった
花を愛する無口な大将
あれは、夢にまで見た『わかさ鮨』。その名前を知ったのは今日だけど、ずっと昔から知っていたみたいな感覚だ。
そう・・・だな、『再会』ってことかな。
昔ながらの寿司屋さんだ。自動ドアが壊れて手動ドアになっているところも味がある。
なぜか店先で花を売っている。ついでに売るにしては立派な花である。副業にも妥協しない寿司屋さんがまずいわけがない。
店に入る。先客はおらず、僕ひとりだけである。迎えてくれたのは大将とおじさん。無口な大将と少しだけ喋るおじさん。
頑張ったご褒美に
カウンターの一番端に座ると、お品書きを渡される。途中日陰で少し休んだけれど、汗は引かない。とりあえず烏龍茶を注文する。
この烏龍茶は血の一滴。干からびた体に染み渡る。
落ち着いたので注文することにしよう。大体こうやって遠出してきて、2回目があるか分からない時は一番高いメニューを頼みがちだ。
その店の全力を一度で味わい切ろうという浅はかな考えである。そうやって失敗すること数知れず。
今回は食べる前から再訪の予感がしたので、『特上握り』ではなくて、『上握り』を注文。
その800円の差はどのようなものだろうか。それは2度目に来た時に楽しめば良い。
烏龍茶を飲みながら辺りを見回す。猫の置物が多い。醤油差しも猫だ。僕も猫が好きなので、非常に癒される。
もう1つ印象的なのは、重ね上げられた寿司桶がふた山。全部で30枚くらいか。出前に力を入れているのだろうか。
カウンターの近くにはテレビ前が設置されており、録画だろうか、関西ローカル番組が放送されている。
時間がゆっくり過ぎていく。回らない寿司屋で普通に寿司を食べられるようになったのは(金銭的にも精神的にも)ここ数年であるが、1人で入るのは居心地悪いと思いきや、ここはそうではなかった。
真打ち登場
下駄に載せられて上握りが登場。
大迫力である。みっちみちやないか。
下駄は一般的な大きさであるため、寿司が異常に大きいのである。周りのものと比べてみればわかるが、普通の寿司の2、3倍の大きさがある。
うん、デカ過ぎる。穴子、海老、中トロ2貫、ネギトロ巻2つ、鉄火巻き4つ、いくら軍艦、ハマチ、玉子、大トロである。
冒頭で江戸時代の寿司は大きいということを書いたが、ここまで大きい寿司を見るのは初めてだ。
ひと口では無理である。大きい寿司を食べやすいように2つに切って、それが2貫で1セットの起源と聞いたことがあるが、それも納得だ。
これだけ大きいと、味も大味かと思いきや、そのようなことはなく繊細で上品な味わいだ。
温かくて香ばしい穴子、ありきたりな表現で申し訳ないが字の如くとろける中トロ。
いくらが載ったハマチも脂のりのりだ。海老も肉厚でしっとり蒸し上げられている。
箸休めの巻物と玉子も絶品だ。こんなに大きいいくらの軍艦は食べたことがない。もちろん美味しい。
ネタが笑えるくらい大きいが、シャリも大きい。一人前で1合半くらい使っているのではないだろうか。デカ盛りの名に恥じない。
そしてラスボス。大トロである。
一番奥から引っ張り出して来たが、デカ過ぎるだろ・・・。小さめのイカ1杯分くらいの大きさがある。これ、一貫でいくらするのだろうか。
噛まずにとろけるとはまさにこの事だが、トロ3貫の脂の威力は凄まじく、ガリを少し残していたことを神に感謝した。なめこの味噌汁もありがたい。
満足満足。心ゆくまで寿司を食べることができた。しばらく寿司はいいと思えるくらい。
この量と質でこの値段は安過ぎるくらいだ。1つケチをつけるとするならば、上等なトロの連チャンで胃もたれしそうなことくらいか。鯵やイカ辺りを差し込んでくれていたら、というのは贅沢すぎるか。
寿司を楽しんでいる間、変に干渉して来ないとろこも居心地がよかったし、『いただきます』『ごちそうさまでした』と言ったときの大将の嬉しそうな顔と『どうぞー』『ありがとうございます!』にも癒された。
もう1人のおじさんも見送りありがとうございます。また来ますよ。
また素敵公園あるよ。『下連雀わかくさ児童遊園』。三鷹、恐ろしい子。
さて、と。満足し切ってしまったので、帰りたいところ。
『お寿司食べたから帰るのダァ。クーラーの効いたお部屋で世界樹やるのダァ』。
一応調べてみるか。徒歩20分くらいなら考えてやらんでもないぞ。ここから『ほたるの里』までは・・・、
ハイ、帰ろう。お疲れ様でしたー!
↓再訪で特上握りを食べました。