人は誰しも苦手な食べ物があると思うんですよ。子供の頃は嫌いだったけど、大人になってから好きになったとか。その逆も然り。
個人的なことを言えば、子供の頃「茄子」と「セロリ」、「かぼちゃ」が嫌いでしたが、今ではどれも好きですね。特に茄子に至っては、焼いてよし、揚げてよし、煮てもよし、何だったら生でもよしという万能っぷりに長く目を逸らしていた自分を恥じているところであります。
そんな僕にも苦手意識がいまだ拭えない食べ物があります。それは、
『 エースコックのわかめラーメン』。
また子供の頃の記憶で恐縮なのですが、親戚の男の子と遊んでいたときに母親が食材の買い置きがなかったのか、「こんなのしかないけど二人で食べなさい」とわかめラーメンを2つ差し出してきたんですね。
当時の僕は負けず嫌いだったので、「絶対この子より先に食べてやる!その後、外に遊びに行くんだ!」と意気込んでおりました。
負けることは嫌いだけど、アンフェアはもっと嫌いな僕は、きっかり3分待ってからラーメンを食べ始めたのです。
食べ始めてすぐに感じる油っこさ。麺もぼそぼそして歯切れが悪い。普段は好きなわかめも何だか気持ちが悪い。今思えば体調が悪かったのかもしれない。体が受け付けなかったのだ。
それでも我慢してラーメンを食べきった。そして、早食い対決に・・・負けた(僕が一方的に勝負してただけだけど)。これがトラウマになり、僕はそれ以来エースコックのわかめラーメンに手を出すことができなかったのです。
因縁の対決
突如現れるわかめラーメン
そんな僕の元にわかめラーメンが姿を現した。セブンイレブンで定期的に行っている700円買ったらくじを一回引けるというキャンペーンで当たったのだ。
僕は幾度となくくじを引いてきたが、9割は何かしらが当たっている。セブンイレブンの700円くじで打率を競ったら、イチローどころかギネスに載ってしまうだろう。
何の才能もない僕に与えられた唯一のスキル。それは『セブンイレブン700円くじディスティニー・ドロー』なのかもしれない。
忌々しい。悪魔的フォルムを見せつけてくる。なに、恐れることはない。茄子もセロリもかぼちゃも食べられるようになったじゃないか。わかめラーメンがどうしたというのだ。わかめ自体は大好きなのだから、大したことじゃないだろう。
それと同時に「ミニ」の二文字に安堵している自分がいる。ありがてぇ・・・ありがてぇ・・・。
エースコックお得意のフライ麺。最近はノンフライ麺が主流になりつつあるが、エースコックはフライ麺に拘り続けているな。これも敬虔なエースコック信者の熱烈なる支持によるものなのだろう。そして、そのスープ。一体何が入っているか分からない。惑わすつもりか。昨今流行の液体スープはどうした。
見ていろ、エースコック信者。正義の鉄槌をお見舞いしてくれる。
お湯を注いでみる。具はわかめとコーンと胡麻か。貧弱、貧弱よ。
3分待って完成。
あの出来事以来か。お前を口にすることになる日がまた来るとはな。
実食
!!!
なんという醤油のキレ。昨今の味濃いめのカップラーメンとは真逆を行くあっさり醤油。それでいてこの存在感。そして、スッと消えていく。これが歴史の味か。
スープを口に含み、飲み込むときに抜けるスパイス感、胡麻の香ばしい風味。味が多重的である。さすが35年のロングセラーとでも言うべきか、完成度の高さに驚かされる。自分が子供の頃に食べたあれは一体・・・?
いやいや、麺を食べてみなければわからないぞ。判断を下すには早計過ぎる。
麺を恐る恐る啜ってみる。フライ麺なので、当然ながら滑らかさではノンフライに劣る。ブツッと切れる食感もフライ麺らしい。しかしなんだ、このスープとの親和性は。このスープにこの麺あり。研究されつくされ、確たる実証を元にした最良の取り合わせ。懐かしい、安心する、飽きずに食べられる。愛され続けるわけだ。
具のわかめ?当然うまい。カップラーメンを食べているのに、「体にいいものを取り入れている」という事実が罪悪感を帳消しにする。これだけのわかめを一度に取るには、他に味噌汁かサラダくらいしか方法がないだろう。胡麻のプチプチ感がアクセントになり、スパイスで刺激された舌を優しく収めるコーンの甘さ。貴様、計算されているな。
終戦
今思えば、何故わかめラーメンに苦手意識を持っていたのだろう。普通に美味しいじゃないか。当時体調が悪くて味覚が死んでたとしか考えられない。これでまた一つ苦手な食べ物がなくなり、成長できたと思う。
苦手なものはあと3つ・・・かな。「豚肉とか牛肉の脂だけの部分」と「お節料理に入っている苦いのか甘じょっぱいのか甘辛いのかよくわからない海老や小魚」「あけびやイチジク等のどこ食べたらいいのかわからない系果実」。