うたかたラジオ

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【ネタバレあり】『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』レビュー【AmazonPrime】

これも何かの縁

知らぬ間にAmazonPrime会員になっていたということで、とりあえず落ち着いて映画でも見てみようかといくつか視聴してみましたが、「月額400円でこれは安い」という印象です。

今は色々な動画配信サービスが普及していますし、人によって合う合わないがあると思います。

僕は結構気に入ったので、これも何かの縁と思ってしばらくは加入してみたいと思います。

ということで、たまたま目について視聴を決定した『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』について、ネタバレありのレビューをしたいと思います。

あらすじ

 主人公は、明日の自分のゆくえも決めきれない高卒ホヤホヤの18歳男子・勇気。
ひょんなことから生まれ育った都会から遠く離れ、携帯も繋がらない、コンビニも無い、若者もあんまりいない、山奥の村で林業に従事することに。

危険と隣り合わせの超重労働に心は一瞬で折れ、すぐにでも逃げ出すつもりだったのだが…。

気の強い美人に恋したり、変わり者だらけの村の住人たちを好きになったり、山で不思議な体験をしたり、自然の絶大なる存在にかけがえのなさを感じてしまったり…。そして、なんといっても、今切り倒した木は自分達の祖先が植えたものであり、今植えた木を切り倒すのは自分達の子孫であるという、100年先を見据えた、気の長い“未来を作る”仕事─【林業】の魅力に、勇気は次第に気付いていく─(WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~ - 映画・映像|東宝WEB SITE)。

やりたいことはないし、やる気もない。何をしたらいいかもわからない。

大学受験に失敗して一度は浪人の選択をしたものの、将来について何の方向性も決まっていない勇気。

ある日ふと目にした林業の研修参加プログラムのパンフレットを見て、軽い気持ちで山奥のド田舎の村に行くことに決める。

18歳そこそこで将来のビジョンを見通せという方が酷だと思うのは僕だけではないはずだ。

僕自身、大学進学を決めた時点では何も将来のことは考えていなかったし、やりたいことなんて何もなかった。

「とりあえず大学」というのは悪い意味で使われることが多いけれど、とりあえず選択肢が広がり保険にもなる大卒資格を得るために大学進学を決めるのはそれほど間違ったことではないと思う。

リアルな人物設計

本題に戻すと、林業の研修プログラムは1年間で、座学、実地を通して卒業となる。

その後は近隣の林業会社に引き取られ、1年間の見習いを経験することになる。

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勇気は、やる気なし、ノリは軽薄で不真面目。いつもへらへらしていて覇気がない。

これもよく言われるような「典型的な近頃の若者感」が出ていて、なんとなくやることないから研修に参加してみましたという状況がリアルである。

また、研修のクラスの同級生を見ても脱サラしたり、親に強制的に送り込まれたような不良がいたり、頭でっかちな理論派がいたりと妙に作りこまれた設定だ。

研修を生き残るのすらも最初の三分の一程度というもあるあるだね。

林業に真摯に向き合うことによる人間的な成長

最初は逃げ出すことだけ考えていたし、都会に帰れる日を指折り数える毎日だった。

その考えも日々杣人(そまびと:樹木の伐採・製材に従事する者)として林業に向き合うことによって徐々に融解されていく。

作中のシーンで特に印象的だったのが、勇気が引き取られた「中村林業」の中村代表と勇気の先輩である与喜の言葉である。

「あの杉、1本倒して80万ですよ!今日売れた分全部足したら・・・、グフッ。この山みんな切り出したら億万長者じゃないですか!」

「ん?まぁ、そういうことやなぁ」

「なんでこんな車乗ってるんですか?ベンツ乗りましょうよ、ベンツ」

「お前ほんまにアホやな。自分が生きとるうちのことしか考えてへんやろ。なぁ?」

「なんかおかしいです?」

「先祖が植えたもん全部売ったったら俺らの次の世代、また次の世代どうするんや。100年もせず打ち止めや」

「はぁ・・・」

「せやから苗木を植え続けて大事に育てたらなあかん。おかしな仕事やと思わんか。農業やったら手間暇かけて作った野菜がどんだけ旨いか、食べたもんが喜んだか分かるけど、林業はそうはいかん。ええ仕事をしたかどうか、結果が出るのは俺らが死んだ後なんや。まぁ、なあなあやな!」

自分たちがしている仕事は、将来の世代に向けての仕事。結果が出る頃には自分たちはこの世にはいない。

先祖たちの遺産を食い潰すのは簡単だけれど、脈々と繋がっていく未来の杣人のために誠実で妥協のない目の前の仕事を黙々とこなしていく。

これが林業であり、杣人に課せられた使命なのだという。

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勇気にとっては今まで考えたこともなかったような事実をまざまざと見せつけられ、次第に成長していく。

物語中盤で勇気の元彼女が所属する大学のサークル「スローライフ研究会」が杣人の仕事風景を見学しに来るが、これが薄っぺらいのなんの。

命がけの仕事を蚊帳の外からつついて「すごーい」「あんなことするのー?」「へー」と好奇の対象として見ているだけだ。

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虫に刺されるのも嫌だし、手が汚れるのも勘弁。

木こりさんは凄いねー、ほんと感謝感謝。マジリスペクト。

こんな泥臭い文化も自分と関係ない遠く遠くの山奥であるんだなぁ程度である。

杣人を理解するつもりなど毛頭ないのだ。

一年前の勇気はこのサークル側の人間のような考えであったが、人間としてひと回りもふた回りも成長している。

この軽薄な連中を強制的に帰らせたシーンはスカッとした。

ここだけではなくて、無理やりではない成長の軌跡が見ていて心地いい。

村に来たばかりの頃は自分本位で、自分さえよければどうでもいいと考えていたが、不意に見つけたお地蔵さんに自分のおにぎりを半分差し出したり、雨に濡れた時も自分より先に同行者にタオルを手渡したりと自然な優しさが光る。

 

「なあなあ」とは

タイトルにもなっており、作中でも随所で使用される「なあなあ」という言葉。

日常的にはあまりいい意味で使われず、「馴れ合い」だとか「妥協して安易に済ます」というようなイメージである。

街中で「なあなあで行こうや!」と言っている人を見たら、胡散臭く感じることだろう。

しかしながら、本作中の「なあなあ」は物語の舞台の神去村の方言で「ゆっくりのんびり行こう」というニュアンスの言葉であり、ここでは林業で栄えた村ならではの意味が込められているのだろう。

先祖が命を懸けて守ってきた樹木も山火事や自然災害で無残にも崩れ去ってしまうこともある。

しかし、そのような事象もありのままに受け入れ、自分たちにできる目の前のことを確実にやっていこうという意思の表れではないのだろうか。

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 総括

見始めたときはあまり期待していないこともあって、休み休み気楽に観るかーと考えていたが、世界観に引き込まれて最後まで集中して観てしまった。

進路選択に迷う高校生をはじめとして、日本の文化に触れてもらうために外国人の方にも安心して勧められる作品である。

観た後に知ったことだが、監督は『ウォーターボーイズ』を手掛けた矢口史靖氏である。

無気力で不真面目な若者が無心で没頭できる対象を見つけ、人間的に成長して行くという爽やかストーリーになるほどと唸った。

作中で描かれる人間模様、対置表現、伏線の張り方・回収が見事である。

最後の方のアレがソレに突撃するシーンは予想外だったが、まぁ田舎の五穀豊穣の祭りには付き物なのだろう。激しすぎィ。