国宝・重要文化財のバーゲンセールや!!
ということで始まりました。今回はお散歩記事ですね。
遡ること3週間。2月半ばに有休を取って駒込にある六義園に行き、ちょうど開花時期の梅を愛でた流れで目的地向かいました。
場所は六義園のすぐ裏、日本医師会や駒込警察署が並ぶ通りに鎮座する『東洋文庫ミュージアム』。
名前の通り、東洋全域の歴史や文化に関わる資料や文献を所蔵しているミュージアムです。
!!!
わかります。この記事を読み終えたとき、あなたは冒頭の言葉を頭に浮かべることでしょう。
「国宝・重要文化財のバーゲンセールや!!」、と。
文京区駒込『東洋文庫ミュージアム』
アクセス・入館料
場所は先に書いたように、六義園の裏手の道路に面した場所にある。
駒込駅を出て、本郷通りに沿っていけば迷わないはず。
途中こんな3人組もいるので見つけてみよう。
東洋文庫の歴史は古く、財団法人として設立したのは1924年。ここ東洋文庫ミュージアムは2011年に開館しており、建物は見ての通り新しく非常に大きな建物である。
駒込警察署を目指して進んでいれば自然と目に入ってくるだろう。
この日は平日ということもあって、人はまばらだ。
建物に入って右手に進むとミュージアムショップがあり、奥には会計とミュージアムの入館受付が見える。
入館料は一般900円、大学生700円、中高生600円、小学生以下290円、65歳以上は800円となっている。
一般的な美術館・博物館の入館料の相場からすると、やや高めの価格設定に思えるが、それだけ貴重な資料が展示されているのだろうと期待が高まる。
ちなみに六義園の入園とセットになったお得なチケットもあるようだ。
オリエントホール~モリソン書庫
入館してすぐ見えるのが広々としたオリエントホール。そして、この長ーい展示ケース。なんと国内最長の展示ケースだそうで。
東洋の文化や歴史について様々な言語で書かれた貴重な書物が綺麗に整列している。
ちなみに東洋ミュージアム館内は撮影自由である。なんという太っ腹。
1階は人が滞留しやすいので、あとでじっくり見ることにしよう。階段を使って2階へ進むと・・・
しゅ、しゅごい・・・。
どこを見ても、本、本、本。
僕は歴史はあまり詳しくないので所蔵されている本がどれだけの文化的・学術的価値を持っているかは分からないが、何より本が大好きなので大興奮である。
とりあえずここにテントを張って2週間くらい過ごしてみたい。
この本の楽園の名前は『モリソン書庫』。
オーストラリアのジャーナリストであるモリソン氏が20年間かけて集めた東洋に関する書籍を岩崎久彌氏が70億円で一括購入。何とも気が遠く、規模の大きい話である。
モリソンさんはこの本をどこに保管していたのだろう。当時、レンタルスペースとかあったのかな。
同じような本がズラリ。これは何だろう。
中国の究極ともいえる百科事典『四庫全書』。本をまとめた本という、これまたスケールの大きいお話である。
ここには四庫全書のカタログには載ったものの、本文は収録されなかった書籍のレプリカが並んでいるそうだ。
中身も見せてくれるのか。どこまでも太っ腹な東洋文庫ミュージアムよ。
改めて仰いでみると歴史に圧倒されてしまうな。
手書き・・・!?
そして7億字・・・。パソコンでブログを書いていて5,000字でも結構書いたなーと思うのに、7億字手書きってどれだけの時間がかかるのだろう。
まじまじ見ちゃうなぁ。
国宝・重要文化財ゾーン
モリソン書庫のスペースを抜けると、そこにはさらなる驚きが。
東方見聞録の現物とご対面できるとは・・・。「黄金の国ジパング」は東方見聞録からではなくてドラクエⅢから学んだワタクシでございます。
『華夷訳語』。中国語と外国語の対訳辞典。
今は当たり前に英和辞典、和英辞典が手元にあるし、ネットでも検索できるけど、対訳の最初の最初ってどこから始めていくのかな。
魏志倭人伝もある。わのなのこくおう、だね。
卑弥呼様ー。ここ凄いよー。
良文のお手本集か。
別に教育にアンチテーゼを唱えるわけではないけれど、学校教育で日本語の長文を書く機会は意外と少ないと個人的には感じている。日本人なのに日本語で文章を書くことを学べないってどうなんだろうと。
僕は今こうやって定期的に文章を書いているから、「〇〇について論じよ」と言われたら、ある程度のことは書けると自負している。文章力自体は稚拙で読めたものじゃないかもしれないけれど、ブログを運営していなかったらまともに文章を書けなかっただろうと思う。
文章を実際書かなかったとしても、本をたくさん読んで作風が好きな作家さんに寄せられていくことはままあるし、僕も影響を受けた作家さんは何人もいる。
ただ、作家さんの好みは人それぞれで自分にしっくりくる人を探すのはなかなか困難かもしれない。そんな中で良文集をきっかけに自分の文章の型を模索できたらいいな、と物書き見習いの僕は思うのでした。
このシミがリアルなんじゃ~。
普通に国宝のネームプレート置いてあるけど、国宝ってこんなに身近に感じられるものなんだね。オラ、だんだん感覚がマヒしてきたぞ。
コ、コ、コーラン。貴重な文献とかそういう次元ではないのでは。
そしてこちらはキリスト教。重要文化財。ウン、ジュウヨウダネ、コレモネ。
あると思ったけど、解体新書。ターヘル・アナトミアだね。解体新書の誕生を映像で見ることができるそうだから、後で覗いてみよう。
お、忠臣蔵か。
上の掲示物は何かと思えば双六だったんだね。双六と言うからには出目でイベントが発生するのだろうか。
討入!篭城!殉死!とかね。友情・努力・勝利みたいだ。
ここが解体新書体験ゾーンか。
暗闇にぼやーっと浮かぶ解体新書。杉田玄白はじめ3人の若者が苦心してターヘル・アナトミアを和訳していく過程がショートムービーにまとめられている。
先ほど対訳辞典をどうやって作り始めるのかと書いたが、杉田玄白らは文章の総体から約するのは困難と考えて単語から一つ一つ訳していったそうだ。確かに遠回りに見えてそれが一番の近道だろう。
(レプリカ)とご丁寧に書いてあるということは、括弧がないものはすべからく本物ということだよね。大したもんだなぁ。
時の回廊みたいなところに来た。
何か分からないけど凄そう(思考停止)。
ほぼ最奥部に近いスペースはまだまだ人が少なくて、貸し切り状態。じっくり見るとしよう。
有名な科挙試験の答案。
未来人が「これ、Word1772で書いたんだよ」と言われたら信じてしまうかもしれない正確無比な書体。
答案の内容はもちろんのこと、文字の巧拙も評価に影響を与えたそうな。
国富論の初版本が世に何冊出たのかはわからないけれど、約250年前の書籍がこの保存状態で保管されていることに驚きだ。
中国の刑法典。
上の解説にもあるように、なんとなく人身売買に関する文章であることが読み解ける。
このしゃもじ部分はどうやって使うんだろう。
1階に戻ってきた。いやー、凄かった。写真に収めたのは収蔵物の一部であり、国宝・重要文化財のオンパレード。貴重な体験をしたものだ。
オリエントカフェ
さて、お腹も減ったので、ミュージアム併設の「オリエントカフェ」で昼食を食べることにしよう。
実は東洋文庫ミュージアムは岩手県の小岩井農場と提携していて、小岩井農場産の農作物や酪農品を使った料理を提供しているとのこと。
迷うけれど、肉料理が食べたい気分だったのでハンバーグがメインの「オイレンブルクセット」にしよう。
店内は広々としてお洒落な空間。開店間もない時間だったが、8割方埋まっていた。団体客の予約もあるようで人気ぶりが分かる。
注文後、サラダとスープが提供される。
優しい、とにかく体に染み渡るような優しい味。毎日このサラダとスープを食べていたら体の中から綺麗になりそうだ。
平日の朝なんてバタバタしてパンとコーヒーを流し込むのがやっとだけど、ゆったり時間をかけて優雅なブレックファーストを嗜む世界線はどこにあるのか。
メインのハンバーグとライスが到着。これ、絶対美味しいやつ。
ハンバーグはみっちりと中身が詰まっているのにふんわりしっとりしていて、次々と肉汁が溢れ出してくる。スパイスは必要最小限にとどめて、肉本来の美味しさを前面に押し出しているようだ。
うん、確かに今自分は肉を噛みしめているんだな、と。これが血肉となり活力になるんだな、と。
肉がデミグラスを誘発し、デミグラスが肉を誘発する。箸休めの野菜たちがまたしみじみと美味しいこと。
最後は珈琲で〆。ランチとしては若干お高めかなとは思うものの、ちょっとした非日常感とこのお味を楽しめるならむしろお値打ちかな。
大満足だったよ、東洋文庫ミュージアム。再訪は確実でしょう。
まとめ
自分が生活している領域から出て新たな文化に触れることで閃きや新たな価値観を得ることができる。
そのきっかけは本だったり、映画や旅行だったり様々だ。その一つが美術館や博物館であり、僕は好んでそういった場所に出かける。今まで結構な数訪問したけれど、「行かなくてよかったかな」と思う場所は一つもなかった。
そして、今回の『東洋文庫ミュージアム』でも様々な気づきがあったし、周りの人に是非とも一度は遊びに行ってほしいと心からお勧めできる場所になった。
東洋文庫ミュージアムへ、ちょっと足を伸ばしてみてはいかがでしょう。