うたかたラジオ

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【終わらない夏を僕らと】GBAの名作RPG『マジカルバケーション』

最近、急に涼しくなってきましたね。6月終わり頃からの猛暑が終わるかと思うと清々しますが、決して夏が嫌いなわけじゃないんですよ。

それだけ今年の夏の暑さが異常でした。思い返してみると『そんなことあったなぁ』程度なんですけどね。火中の栗は熱いのです。

 

さてさて、夏も終わりということで、『夏に遊びたい(夏を想起させる)ゲーム』を紹介したいと思います。挙げだすとキリがないので一つに絞りますよ。

 

ぼくのなつやすみ?

ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇

ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇

 

ちょっと王道すぎるかな。

 

スーパーマリオサンシャイン?

スーパーマリオサンシャイン

スーパーマリオサンシャイン

 

うーん、こちらもメジャーですね。

 

個人的にはですね、このゲームを推したい。

Magical Vacation(マジカルバケーション)

Magical Vacation(マジカルバケーション)

 

GBAの隠れた名作『マジカルバケーション』。

第2弾も上げました!

www.utakata-radio.com

 

ようこそ魔法が生きる世界へ

【簡単なあらすじ】

このゲームの主人公は、魔法学校ウィルオウィスプに通う15人の見習い魔法使いのクラスメートである。

彼らは担任のマドレーヌ先生に引き連れられて臨海学校に行くことになる。キャンプ地であるヴァレンシア海岸は毎年行方不明者が出るという曰く付きの場所。

案の定彼らは謎の生物“エニグマ”に襲われ、何人かの生徒が攫われてしまう事件が発生。

マドレーヌ先生を始めとして残された生徒たちは彼らを探す旅に出る。

その旅の途中で様々な出来事に出会い、ウィルオウィスプの歴史やエニグマの正体が明らかになってゆく。

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↑主人公は上掲の15人である。独特で味のあるタッチからほんわかストーリーを想像してしまうが、楽しそうなのは物語冒頭の臨海学校に出かけるシーンまでで、その後は重かったり切なかったり悲しかったりとダークな雰囲気が漂う。

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↑ここまでは子供向けなのに。

 

目を背けたくなる事実

ひとつ例を挙げてみる。最初に訪れるトルーナ村はパペット(人形)の村であり、心優しい女の子のミルフィーユが出迎えてくれる。その隣には性格の悪そうな男ティラミス。幼馴染らしい。

村のパペットたちの話を聞くに、最近「パペット殺し」が横行しているそうだ。

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こんな物騒な村に長くはいられないと主人公たちは先を急ごうとするが、ある事情により村に一泊することになる。

先ほどの男であるティラミスは宿屋を経営しているため、仕方なく彼の宿屋を利用することに。

宿屋のカウンターのすぐ近くには男の子のパペット人形が置かれている。そのパペットに近づこうとすると、ティラミスが鬼の形相で言い放つ。

「それは俺の弟だ!200年前に崖から落ちて動かなくなったんだ。壊れないようにずっと守ってきた。余計なことはするな!」と。

異常である。彼の弟は壊れた(死んだ)のだ。彼は愛する弟の死を受け入れきれずに心を病んでしまっているのだろう。

気味が悪いが一晩ここで過ごすしかない。・・・不安な夜が明ける。ここで突然BGMが消える。

ティラミスの宿を出ると、目の前でパペットが倒れている。どうやらもう壊れているようだ。村の住民たちは騒然となる。

「またパペット殺しだ」「同胞がやられた」。

仲間を思う気持ちが伝わってくる一方で、彼らは自分たちがいつか壊れてしまうものであるという事実を諦観しており、冷めざめしたものを感じるところが不気味である。

この時点で明らかに怪しいのはティラミスしかいない。主人公の一人(ガナッシュ)が問い詰めたが、あまりに身勝手で救いようのない彼の言動に嫌気がさしたのか、ガナッシュは彼に瀕死の重傷を合わせてしまう。

命辛々トルーナ村に戻るティラミス。ミルフィーユは彼を治療しようとするが、彼は拒否する。

自身の胸を掻き毟り、こう言う。「俺のハートを取り出して弟にあげてほしい。そうすれば弟は生き返るから」。

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ミルフィーユは自棄になった彼を止めようとするが、ティラミスはそのまま動かなくなってしまう。

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パペットには人間のような血は通っていないだろうが、ハートはきっとあるのだろう。

しかし、それは目に見えるものではないし、取り出すことができるものでもない。

ティラミスも知っていたはずだ。最愛の弟を亡くした(壊れてしまった)事実を受け止めきれずに、取り出せるはずのないハートを手に入れようと多くのパペットをその手にかけた。

彼の心は頑なだったろう。彼の時間は200年前から止まっていたのだろうが、この痛ましい事件を経て、また動き出したかもしれない。ハートがなくなってしまったのが残念で仕方がないけれど。

村のBGMは穏やかで耳心地が良いような気もするけれど、どこか壊れかけの時計のような危うさが感じられる。

事件後に宿に訪れると、ティラミスのいなくなった宿のカウンターにはなぜかミルフィーユの姿が。いつも通りの優しい彼女だ。感情の抑揚がないような、あんなに悲惨な事件がなかったかのような日常。最初からこうだったみたいに。そして亡くなったティラミスは、彼の弟の隣に仲良く並べられている。

この村、まさか・・・。

ひとつのエピソードを拾ってみてもダークである。何かを問いかけるような、何かを感じ取ってほしいような不思議な吸引力がある。

 

僕の心に刻まれる名作

もちろん全編通して暗いわけではないが、哲学的で考えさせられる言葉やシュチュエーションが多い。

主人公たちは年相応の無邪気さの裏に様々な背景を抱えていて、魔法学校で立派な魔法使いになってほしいという周囲の期待も相当なものだろう。うまくいかなくて悩んで苦しんで・・・。ウィルオウィスプに集うべくして集った生徒たちなのかもしれない。

子供心に非常に強く印象に残ったゲームである。大げさかもしれないが、僕のモノの考え方や思想に少なからず影響を与えたゲームだと思う。

古いゲームで、ハードを揃えるのも一苦労だが、一人でも多くの人にプレイしてもらいたいゲームである。まだまだ語りたいことはあるが、それはまたの機会に。