先日、昭和からのロングセラーお菓子である『かにぱん』と『源氏パイ』の記事を書きました。
↓前回の記事はこちらから。
本当は不定期でのんびりと続編を書いていくつもりでしたが、参考資料をちょっと読み進めると書きたいことが山のように出てくるので、早めの第2回目と相成りました。
↑ちまちまっとした図鑑形式の雑学本が好きな方におすすめ。
ということで今回は『ルックチョコレート』『ナボナ』の2つのお菓子にスポットを
当てて書いていこうと思います。
どうぞごゆっくり。お茶でも片手に読んでいただけたら幸いです。
『ルックチョコレート』
オシャレなあの子は1962年生まれ
『ルックチョコレート』といえば、大きく書かれた「LOOK」の商品名の「A La Mode」の文字。
4種類のフレーバーチョコレートが描かれ、製造元の不二家のロゴマークがアクセントになっている。
洗練されていてオシャレというのが僕が子供の頃から一貫してルックチョコレートに対して抱いている印象である。
後に書くが、この洗練されたパッケージというのも1962年の発売から試行錯誤を重ねて現在のものに落ち着いている。
4種類のフレーバー
現行品は「バナナ、アーモンド、ストロベリー、コーヒー」の組み合わせであるが、季節に応じて随時1,2種類の入れ替えが行われている。
↑既に現行品のスタイリッシュさの萌芽が見える。
当時のフレーバーは「バナナ、ストロベリー、キャラメル、コーヒー」。この時点でほぼ完成していたのが分かる。
↑ちなみに中身は板チョコになっており、そのまま齧ることも分割してフレーバーごとに食べることもできる。
左下に「12コ×12B=144コ」と書いてあるが、当時はルック1ダースが50円だったのか。「ルック」なのに「ダース」とはこれいかに。
1つのパッケージの中に色々な味のチョコレートが入っているというのは画期的で豪華なイメージを与えるし、先見の明があったとしか言えない。
↑1972年頃は縦型のパッケージで売り出していたようだ。
陳列棚で見かけたら「ルック、縦型出したんだ~」と自然に手に取ってしまうほどに洗練されたデザインである。
↑この辺りのパッケージには見覚えがある。
そうそう、パイナップルフレーバーの酸味が好きだった。ストロベリーは優しい甘みで酸味抑えめ、まったりとした口をサッパリさせてくれる清涼剤だった。
この時点で40周年か。画像の引用元の不二家のホームページを覗いてみると目にも鮮やかなルックチョコレートの歴史が時系列で紹介されていて圧巻である。
チョコに印字された文字のあれこれ
4種類のフレーバーを判別するために
当初のルックチョコレートには不二家の「F」マークが刻印されていたようだが、これが「L」「O」「O」「K」に変更される。
4種類のフレーバーを判別しやすくするために4種類の文字を用意したのだ。
いやいや、Oがダブっとるやんとお思いの方、安心してほしい。
Oの2つ目は◎になっていて、しっかり4種類を見分けられるという配慮がなされているのだ。
そして最近のものは「F」「a」「la」「mode」となっている。
↑よく見てみると確かにそう刻印されている。
不二家の「F」マークの由来
あまりまじまじと見たことはなかったが、不二家の「F」のロゴマークはこんなに可愛らしく洗練されたデザインをしている。
「F」には、Familiar(親しみやすい)、Flower(花のような)、Fantasy(夢)、Fresh(新鮮)、Fancy(高級な品質)の5つの意味が込められている。
記憶に残りやすいデザインなのだろう。遠目に見てもこのマークがついている商品が不二家のものだとすぐにわかる。
チーズ味のルックが存在したかも
ルックチョコレートは基本の4種類の他にも様々なフレーバーを世に送り出してきたが、どうしても「チーズ」味だけは商品化までたどり着いていないそうだ。
単品で「チーズケーキ」が発売されているので、売り出すこと自体は可能である。
しかし、ルックチョコレートの性質上4種類のフレーバーを用意しなければならず、4種のチーズを揃えるとどうしても「無理やり感」のある構成になってしまう。
クリームチーズやマスカルポーネはいいだろうが、ゴーダチーズやチェダーチーズはなかなか難しそうだ。
フルーツフレーバー3種にチーズ1種というのもなんだかねぇ・・・。
『ナボナ』
1963年に誕生し、贈答用お菓子としての確固たる地位を築く
全体的に軽くふんわりとしたナボナ。少し硬い表面を抜けると空気をたくさん含んだスポンジ生地に歯が沈み込み、やがて上品で滑らかなクリームに当たる。
レギュラーのチーズクリーム、パインクリームに加え、これも先述のルックと同じように季節ごとの独自のフレーバーが登場して、常時3種類ほどで運用しているそうだ。
ミルクティクリームもレギュラーの地位にあるそうだが、まだ食べたことはない。
ちょっと高級で、普段はおやつのラインナップには並ばない特別なお菓子。
そう、ナボナはあくまで贈答用のお菓子であり、自分で買うよりも貰うことが圧倒的に多いお菓子だ。
もちろん店舗に赴けば普通に買えるのだが、この距離感が心地よく、ナボナとは特別な関係でいたいという不思議な感覚がある。
昔はなんとなく苦手だったチーズクリーム
本の中で著者がチーズクリーム味への並々ならぬ愛を語っているが、僕は子供の頃チーズクリームがあまり得意ではなかった。
チーズクリームとパインクリームの2択であれば迷わず後者を選択するし、キューブ状の甘酸っぱいパインのアクセントがたまらなく好きであった。
そもそも「チーズ」というものは、「チーズトースト」や「グラタン」、「ピザ」のような❝食事❞で登場する食べ物であって、お菓子やデザートに顔を出すのに違和感を感じていたのだ。
時は流れ、少年は大人になる。
チーズクリームのコクとスポンジの軽さが合う!
まろやかなチーズクリームの中にキューブ上のチーズが点在し、独特の食感と風味を生む。まさに「コクッコクッ」という歯ごたえ。かすかな塩味が味を引き締める。
ナボナの名前の由来
『ナボナ』といえばあの洋風どら焼きとでもいうべき姿が想像されるが、一体この名前はどこからきているのだろうと昔から疑問に思っていた。
実はナボナは発売当初「ナポリ」という商品名で売り出そうと企画されていたそうだが、既に「ナポリアイスクリーム」という商品を扱うメーカーに商品登録されていたことから次善の策として提案されたのが『ナボナ』だったそうだ。
そこで、製造元の亀屋万年堂は「❝ナポリ❞と同様の路線でイタリアをイメージするような名称はないか」とイタリア大使館に相談。
「イタリア市民の憩いの場となっている『ナヴォ―ナ広場』から取ってはどうだろうか」とアドバイスを受けて、『ナボナ』が誕生した。
↑ナヴォ―ナ広場
結果として『ナボナ』という印象的な商品名となったので、大成功だろう。
まとめ
今も当たり前に買えるお菓子も現在の地位に根付くまで様々な試行錯誤を重ね、独自性を特化させてきた軌跡が伺える。
『新 まだある。大百科』は読み始めたばかりであるが、読み進むたびに新たな発見があり、子供の頃から考えてきた疑問が氷解していく感覚を味わえる素晴らしい本である。
第1回でも書いたことの繰り返しになるが、「全く役には立たないかもしれないけど誰かについ話したくなる豆知識」をゆっくりのんびり楽しんでいただけたなら幸いである。
↓第1回の「かにぱん」「源氏パイ」編はこちらから。