一世を風靡した映画『君の名は。』から約3年。
新海誠監督が送る最新作『天気の子』が2019年7月19日(金)劇場公開ということで、早速初日の朝一番の上映回に行ってきました。
↓8カ月前に書いた『天気の子』についての記事はこちらから。
↑新宿バルト9で主人公の森嶋帆高(もりしまほだか)とヒロインの天野陽菜(あまのひな)がお出迎え。
平日の9時だというのにスクリーンは大満員。前作『君の名は。』の感動を体験したら、いち早く最新作を観てみたいという気持ちはよくわかります。
メイン層は学生~20代くらいで、ちらほら40、50代のおじさんも散見されることから、幅広い年齢層の期待を背負った注目作と言えます。
今回、記事を書くにあたって「ネタバレするかしないか」は非常に迷いました。
情報の先出しをしてしまうと、
『天気の子』最高でした。
公開初日にアップする記事であるということもありますが、『天気の子』に興味がある方の一人でも多くが劇場で一次的に情報を取り入れてほしいと考えたので、あえて
ネタバレなし
で書いていこうと思った次第です。全くノーマークですよという方が「おっ、面白そうだな」と感じていただけたら、それ以上の幸せはありません。
あらすじ
「あの光の中に 、行ってみたかった」
高1の夏、離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅に、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟と明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には不思議な能力があった(映画『天気の子』公式サイト)。
偶然にもここ数週間雨続きでパッとしない天候の東京。『天気の子』の舞台も『君の名は。』同様、東京の新宿です。
やはり映画の舞台と同じ場所で観るのは格別の想いがありますので、行けるのであれば是非新宿で観ていただきたいところです。
さて、上述のあらすじに補足を加えるとすれば、陽菜の不思議な力というのが天候を局所的に操ることができる(主に雨を晴らす)力であり、その超常的な力は決して無制限・無制約なものではないのです。
この時点でなんとなくストーリーの展開が予想できると思います。
しかし、正直話の流れが分かる云々はどちらでもよくて、そこに至るまでの節々の緩急と流麗な背景描写や登場人物の心情の機微、これを彩るBGMと挿入歌、そういった全ての要素が怒涛のように視聴者を包み込み世界に没頭させる力に圧倒されます。
前作『君の名は。』では、最初からアップテンポに上げて上げて上げて、下げて、上げてというような構成でした。
『天気の子』では序盤から緩急を自在に織り交ぜてワクワクが最高潮に上がってきたり、逆に指の先が冷たくなるような絶望的な状況が押し寄せたりと飽きることなく世界に引きずり込まれ続けます。
そして、いつの間にか違和感なくどっぷりと新海ワールドにハマっていること間違いなし。
結末については賛否が分かれるところだと思いますが(恐らく❝否❞が多い)、多少無理やり感は感じるものの、「そんな世界があってもいい」と個人的には思えましたね。
登場人物
森嶋帆高
本作の主人公。16歳。離島から家出し、新宿で貧困生活を送っていたが、怪しげな雑誌編集者に拾われ人らしい生活を取り戻していく。
天野陽菜
本作のヒロイン。100%の晴れ女。もうすぐ18歳。
雨が降りしきる東京のとある病室で、病床の母と良く晴れた空の下散歩したいという願いを持っていた。
ある日、不思議な鳥居をくぐると、彼女には不思議な力が宿った。
須賀圭介
帆高の命の恩人。小さなオカルト雑誌の編集社を営むライター。
飄々としていてクールでドライ。
「擦れた大人」という言葉がぴったりだが、意外に人情深く強い優しさを持った男。
夏美
須賀の会社でアルバイトをしている女子大生。スタイル抜群で色気たっぷり。
就活中だが、自分のしたいことが見つからず、繰り返される就職活動中心の生活に嫌気が差している。
「圭ちゃんと私の関係?君の想像通りだよ」という言葉に心と脳みそをとろかされた男性が多いとかなんとか。
天野凪
陽菜の弟。美少年。帆高からは「先輩」と慕われている。
小学生だが非常にませており、年上の帆高に恋愛指南を行うなど慈善活動にも精を出す。
普通に二股をするなどアクロバティックで末恐ろしい少年である。
「付き合った後は多少優柔不断でもいいが、付き合う前は全力で決断しろ」という言葉は、全国1億2000万の草食系男子に対する有難いアドバイスだ。
ちょっと、そこの男子、聞いてんの?
現代の日本男児が彼の発言に学ぶことは多い。
安井/高井
ベテラン中年刑事と若いリーゼントの刑事。
冨美
本作のグランマ枠。
どうして新海作品のおばあちゃんはあんなに魅力的なのだろうか。
「空の上は別の世界」「お彼岸には空の上からあの人が帰ってくる」
印象に残ったシーン
帆高が新宿を彷徨うシーン
僕も上京してきたばかりの頃は「東京は怖いところだ」「服装に気をつけないと笑われる」「悪い人に騙されないように注意深く行動しなければ」という漠然とした不安を抱いていた。
帆高が新宿を彷徨うシーンはまさにこれを表している。欲望が渦巻く街で、ただ平穏に暮らしていきたいのに、何かをするにも「金、金、金」。
田舎から出てきた芋っぽい人間は嘲笑の対象にされ疎まれる。学生の身分すらない帆高はゴミのように扱われ、行く場所もない。
そんな中で「東京も捨てたもんじゃないな」という出来事が起こり、帆高は人間らしい生活と送るようになる。
「捨てる神あれば拾う神あり」という言葉は本当だなとしみじみ感じた。
人々は「晴れ」を求めている
今日の天気は何だろう。晴れ?曇り?雨?
天気は人の力ではどうすることもできない存在で、それ以上でも以下でもないように思える。
しかし、東京で降り続ける雨は徐々に人々の心を蝕み、本能的に「晴れ」を渇望するようになる。これが物語に深く関わってくることになるのだが、たかが天気、されど天気なのであって、天気が人の心に与える影響がこれほどまでに大きいのかと思わされた。
朝起きて空が晴れていたらなんとなく頑張ろうと思える。それって自然で大切な感情だったんだね。
今この瞬間に足しもせず、引くこともしないでほしい
絶望的状況で帆高が放った言葉。絶望の中だからこそ希望が燦然と輝きだす。この小さな幸せがずっと続いてくれればいいのに。これ以上の幸せを望むなんてしないから、どうか神様、これ以上不幸の雨を降らせないでという心の叫び。
総合的に見て
ネタバレを避けて書くと細部まで表現しきれずにやきもきするが、作品の隅々まで拘りぬかれた描写や登場人物の言葉一つ一つが余すことなく必要不可欠で、帆高の言葉を借りれば、「これ以上足しもせず、引きもしない」状態が奇跡なのだと思う。
総合的に見れば、前作『君の名は。』のインパクトという点に関しては敵わないものの、作品としてのまとまりは『天気の子』に軍配が上がり、上がり切った期待のハードルを見事に超えた名作と評して差し支えないだろう。
ちなみに上の写真が新宿バルト9入館前8時50分頃の写真。
映画を観終えて退館した11時10分頃の写真。
ねぇ、この空、晴れるよ。
まとめ
見て損はないという消極的意見にとどまらず、1人でも多くの方に劇場で観ていただきたいと心からお勧めできる作品である。
じめじめして雨ばかりが降る7月半ば。この映画から夏を始めてみてはいかがだろうか。