うたかたラジオ

お代は“ラヴ”で結構です。

『たばこと塩の博物館』で小林礫斎の繊巧美術の世界に足を踏み入れてみた

ハンバーグ定食を食べた後は、もう一つの目的地である『たばこと塩の博物館』に向かいます。

www.utakata-radio.com

↑この記事の続きです。

場所は押上駅から徒歩十数分の場所にあるため、ふらっと辿り着くのはなかなか難しいところですが、アクセス自体は簡単です。

浅草通りを吾妻橋方面に進み、「業平一丁目交差点」を左折。都税事務所と国税局の前を通って、セブンイレブンが右手に見えて来たらすぐの場所です。

入館料大人100円、子供50円ですからね。さすがJTさんですよ。

たばこと塩の博物館

少し奥まった場所にある素敵な建物

f:id:marurinmaru:20191019064957j:image

「たばこ」と「塩」。

日本たばこ産業株式会社の前身である日本専売公社が設立しているからこれらのテーマは当たり前なのだが、マニアック感がたまらない。

決してメジャーではなく、駅から少し距離を置いてひっそりと佇んでいるのが愛しい。
f:id:marurinmaru:20191019064935j:image

そうそう、この「墨田倉庫」を目指して進めば迷わないかもしれない。
f:id:marurinmaru:20191019064927j:image

常設展示は名前の通り「たばこ」と「塩」。2019年12月1日までは日本の専売特許ともいえるミニチュアを特別展示しているそうで、こちらも実は楽しみにしていたところだ。

 

出迎えるはパイプおじさん

f:id:marurinmaru:20191019065009j:plain

誰か・・・いる・・・。

説明文を読むに、『たばこと塩の博物館』は1978年に渋谷の公園通りで開館しており、そのときのシンボルモニュメントだそうだ。

格好からしてどこかの先住民をモデルにしているのだろうか。

ちなみに押上に移転したのは2015年4月であり、外装は極めて綺麗である。
f:id:marurinmaru:20191019065001j:image

どや?
f:id:marurinmaru:20191019064947j:image

振り返れば突き抜ける青空とスカイツリー。

早速中に入って受付で入場料を支払うと、入館券とパンフレットを貰うことができるが、どれも上質の紙を使用しており、これだけで100円しそうだ。

1階はエントランス及びミュージアムショップ、講演会やイベントを開催時に使用するワークショップルーム、2階は常設展示室である『塩の世界』と特別展示室。

3階は常設展示室である『たばこの歴史と文化』、展示品の入れ替えが随時行われるコレクションギャラリー、こちらも講演会等で使う視聴覚ホールの構成になっている。

まずはエスカレーターを使って特別展示室に向かうことにしよう。

 

特別展示『ミニチュア展』

小林礫斎と繊巧美術

f:id:marurinmaru:20191022110112j:image

ここに展示されているのは四代目小林礫斎という人物が手掛けた作品。

当時はたばこ入れや紙入れを主に扱う袋物商がいたのか。そしてここで初めて特別展示ミニチュア展とこの博物館とのつながりが見えてきた。
f:id:marurinmaru:20191022110117j:image

他の人間が真似ることができない領域、礫斎の❝繊巧美術❞とは、箪笥や茶道具を単に小さくするだけでなく、実物と同じ素材を使って実物と同じように動くミニチュアを作り出すことを指しているようだ。

なるほど、「削る」だけではなく、「刳り貫く」「組み立てる」というような作業が追加される高等技能なわけか。

象牙の箪笥は高さ1cm・・・。そうなると単純計算でも引き出し一つは高さ2mmほどで、仕切りに至っては1mmをゆうに下回る薄さということになる。

 

めくるめくミクロの世界へ

f:id:marurinmaru:20191019064941j:image

まずは礫斎の牙彫職人としての作品から。象牙を加工したシガレットケースや薬匙、印鑑、夫婦箸など。

ミニチュアではないが、象牙を削り出して細工を加えていくことには変わりないので、これらを作り出せるだけでモノづくりのプロである。
f:id:marurinmaru:20191019065015j:image

ミニチュアの世界に踏み込んでゆく。

どの作品も精巧で見惚れるほどだ。小さいだけではなくて、空洞であるべきところは空洞で、稼働すべきところはしっかり動く。現代はロボットに任せることができるかもしれないが、当時人力で作っていたというのだから尊い。

今から、ある作品にズームしていく。
f:id:marurinmaru:20191019064912j:image

繊巧美術の説明書きにも載っていた「一賽六瓢」。

右に見える大きいひょうたん(といっても2.5mm)とその下に小さなサイコロ、左下の一見ゴミのように見えるものは実はさらに小さなひょうたんが5個。

小さなひょうたんは大きなひょうたんに格納することができ、1つのサイコロ→いちさい→「一切」、計6個のひょうたん→6ひょう→むひょう→「無病」で「一切無病」とシャレになっているそうだ。

むひょうはもはや神業。
f:id:marurinmaru:20191019064921j:image

陶芸家との合作。小指の第一関節の大きさもないだろう。

普通の花は大きすぎるから、ブロッコリースプラウトでも挿したらどうだろう。
f:id:marurinmaru:20191019064944j:image

外国から伝来した染織物を豆本に収めた「きれかがみ」。

しっかり本の装丁になっていて、可愛らしい。全面紙製でいいからレプリカを販売してほしいくらいだ。
f:id:marurinmaru:20191019064931j:image

ルーペで細部を見る、という所作は日本人だからこそ心にグッとくるものがあるのだろうか。
f:id:marurinmaru:20191019064906j:image

右上の茶色いミニチュアは自然発生した極小のひょうたんを加工して作った花入れだそうだ。替えが効かないから作成時の緊迫感もすさまじかったのだろうが、そこにもこだわるのは流石である。
f:id:marurinmaru:20191019064953j:image

事前に撮影可能であることは聞いていたけれど、これだけ見事なミニチュアが所狭しと展示されていたら写真に残したくなるのは当然だ。

ただ、この記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたならば、12月1日までは特別展示されているので現物をぜひ見てもらいたい。

↓以下展示物のいくつかを写真に収めたので、載せておく。
f:id:marurinmaru:20191019064919j:image
f:id:marurinmaru:20191019065004j:image
f:id:marurinmaru:20191019064903j:image
f:id:marurinmaru:20191019064909j:image
f:id:marurinmaru:20191019065019j:image
f:id:marurinmaru:20191019064915j:image
f:id:marurinmaru:20191019064950j:image
f:id:marurinmaru:20191019064924j:image

展示スペースとしては、小学校の体育館の半分くらいの広さだろうか。平日で人が少なかったのもありじっくり一つ一つ見て回っていたら40分ほど経過していた。

まだ「塩」と「たばこ」の展示が残っているんだ。存分に楽しむぞ。

 

まとめ

入館する前は常設展示のおまけくらいに考えていたミニチュア展だったが、あまりに精巧で美しい作品たちの気迫に押されて見惚れてしまった。

日常、我々が慣れ親しんでいるものを小さく小さく、もっと小さく・・・。技術の限界に挑戦した一人の男の物語を追憶する貴重な機会であり、同時に日本の誇る伝統文化であると感じる。

しばらくは特別展示「ミニチュア展」を楽しむことができるので、ミクロの世界に興味のある方は足を延ばしてみてはいかがだろう。